攻撃力の高さ
「小早っ!!」
俺の叫びと同時に、空中に硬質な破砕音が響き渡った。
敵の放った不可視の衝撃波が、小早の左肩を正確に捉えたのだ。神力の盾を強引に食い破り、肉薄した一撃。 だが、次の瞬間、俺の目に映ったのは、粉々に砕け散りながら火花を散らす特注のプロテクターの残骸だった。
「っ、……はぁ、……っ!」
衝撃で吹き飛ばされながらも、小早が空中で姿勢を立て直す。肩の防具は失われたが、本体への致命的なダメージは免れたようだ。 ……ゾッとした。 あの場所は、関内の妹に刺され、今は問題なく動くものの、小早の不安を汲んでプロテクターを着けさせていた。あのプロテクターを着けさせていなければ……。今頃あいつの細い左腕は、再び肉を突き破り、二度と空を飛べないほどに粉砕されていたに違いない。
……生身で受けていたら、今度こそ終わっていたぞ……!
背筋を凍りつかせるような死の予感が、俺の神経を逆撫でする。
全員、神力の残量にはまだ余裕がある。だが、敵は俺たちの隙を、執拗に、正確に狙い定めてきている。
「桜木、よそ見をするな!」
通信越しに飛んできた中山の叱咤。
その声とほぼ同時に、ヤツの巨躯から放たれた追撃が、中山の機動を先回りするように空間を焼き切った。
「中山――っ!?」
逃げ場のないタイミング。中山は咄嗟に防壁を展開したが、衝撃を逃がしきれない。 鈍い、嫌な「音」が無線を通じて俺の鼓膜に届いた。生身の人間が、絶対に出してはいけない種類の音だ。
中山の身体が大きくのめり込み、そのまま高度を落としかける。 踏み止まったあいつの左足は、あり得ない方向へと折れ曲がっていた。
「っ、……く、うぅぅ……っ!!」
「中山! 足、やられたか!?」
「中山教官!」
「……あぁ。……折れてるな、これは」
中山は脂汗を流し、苦悶に顔を歪めながらも、折れた足に無理やり神力を循環させた。神力で痛覚は遮断できないが、戦闘続行は不可能ではない。だが、それは文字通り、砕けた骨で自分の肉を内側から削る行為だ。
「無理すんな、中山! 下がってろ!」
痛みで意識だって飛ばしてもおかしくないはずだ。
「……言っただろ、桜木。……もう二度と、犠牲は出さないって。……この程度、歩けないだけで、飛ぶのには関係ない」
折れた足を引きずり、それでも不敵に、物腰柔らかく笑おうとする相棒の姿に、俺は歯が砕けるほど奥歯を噛み締めた。
「関、小早! 一歩も近づかせるな!」
「了解っ!!」
折れた足で空に留まる中山。
血の匂いが漂い始めた戦場で、目の前の絶望を屠るために再び漆黒の空へと飛び込んだ。




