最後の花火
一瞬の静寂の後、空気が震えた。
中山の号令で高度を上げ、あの忌々しい超重装甲種の頭上を奪ったと思った瞬間――、奴の不気味な巨躯に備わった無数のセンサーが、一斉に俺たち中山隊を「捕捉」したのが分かった。
「――っ! 中山、小早、来るぞ!!」
俺の叫びと同時に、視界が真っ白に塗りつぶされた。
敵の巨躯から放たれたのは、圧倒的な質量を伴った神力弾の豪雨。空そのものが物理的な重量を持って押し潰してくるような、絶望的な衝撃波の塊だ。
「展開っ!!」
中山と小早の声が重なる。 二人の両刀手が瞬時に神力を編み上げ、俺たちの前面に巨大なシールドを張り巡らせた。
ガガガガガガッ……!! と、神力と神力が激突し、大気を焼き切るような不快な摩擦音が鼓膜を突き刺す。
「……っ、ぐ、ぅぅぅッ!!」
シールドを支える小早の細い肩が、衝撃のたびに激しく揺れる。隣の中山も、質量の多さに顔を歪め、全神力を防御へと回している。
シールドは、まだ破られてはいない。
だが、俺には分かった。いや、この場にいる全員が、皮膚を粟立たせるような死の予感と共に「その時」を確信していた。
……持たねぇ。あと、数分だ……
俺と関が攻撃に転じる隙すら、敵は与えてくれない。 絶え間なく降り注ぐ凄まじい密度の連撃は、中山と小早の神力を確実に、そして急速に削り取っている。 シールドの表面に走る微かな亀裂。それが広がり、砕け散った瞬間、俺たちは成す術もなく肉塊へと変えられるだろう。
あの日、立川の食堂で、目の前で教え子たちが土煙の中に消えていった光景が脳裏をかすめる。
かつて俺が自決を覚悟し、中山に救われたあの地獄の全滅戦。
あの時の絶望が、再び、より冷酷な形で俺たちの首筋に刃を当てている。
「小早! 意識を保て! 墜ちるな!!」
関の悲痛な叫びが無線越しに届くが、それも爆音にかき消されそうになる。
俺たちはこの圧倒的な物量の前では、ただ消えゆく前の最後の火花に過ぎないのか。
シールドの向こう側で、敵の第二波が、さらに巨大な光を収束させているのが見えた。




