227/281
少しでも楽になりますように
「移動だけで相当疲れただろう。……寝れるようなら、少し目を閉じて休んでいろ」
ベッドに横たわった彼女に声をかけると、小早は緊張がわずかに解けたのか、どこかほっとしたような表情を浮かべながら小さくうなづいた。
だが、その細い指先は、依然として俺の服の袖をぎゅっと掴んだまま離そうとしない。まるで、手放したら自分がどこかへ消えてしまうと怯えているかのように。
「……大丈夫だ。今日はもうずっと、ここにいるから」
優しく声をかけながら、俺は強張っている彼女の左手を包み込み、ゆっくりと、しかし確実にその指をほどいて袖から離させた。
少し時間が経つと、やがて小早の口元から、かすかな寝息が聞こえ始めた。
だが、その呼吸はあまりにも浅く、細い。胸元がわずかに上下するたびに、体内の痛みが波のように彼女を襲っているのではないかと、見ているこちらまで息が詰まりそうになる。
――どうか、少しでも楽に息が吸えますように。
痛みに耐えながら眠る小さな背中に、せめて自分の体温だけでも伝わるようにと、俺は冷え切ったその左手をずっと握り続けた。




