チャンネルが合っちゃったのかな
「小早。僕の記憶に入ってきたんだね」
ふと聞こえた声に振り返ると、そこにいたのは関内くんでした。
「関内くん……っ」
「あまり楽しいものじゃないから、本当は見せたくなかったな。……きっと、似たような痛みを味わったせいで、変なところでチャンネルが合っちゃったのかな」
彼の苦しそうな言葉の直後、再び耳障りなジリジリとしたノイズが響き渡り、今度は冷たい体育館の中の光景が目の前に流れ込んできました。
そこに映っていたのは、誰がどう見ても、もう助からない関内くんの姿。彼の瞳はすでに焦点が合わず、口元からはドロリとした血が絶え間なく流れ落ちています。
中山教官が、そんな関内くんをしっかりと抱きしめ、何か必死に言葉をかけていました。
駆け寄ろうと足を踏み出した私を、目の前に立つ関内くんがそっと手で制して止めます。
「これは僕の大事な教官との最後の記憶だから、何を話したかは内緒。……もう行くよ、小早」
そう言って腕を引っ張られながら、ちらりと中山教官の方を見ると、教官はもう動かなくなった関内くんを抱きしめたまま、全身を震わせていました。
「僕たちの妹が、小早を傷つけちゃって本当にごめんね。……肺に血が入るって、息ができなくて結構痛いよね」
苦しそうに歪んだ顔でそう告げながら、関内くんは私の腕を引いて歩いていきます。ふと顔を上げると、そこに立っていたのは――。
「……安宅くん?」
「小早」
久しぶりに触れた安宅くんの腕の中は、どうしようもなく温かくて、懐かしくて、胸が締め付けられるように安心しました。
「小早、早く戻らないと、本当に戻れなくなっちゃうよ」
「嫌だ……。もう戻らなくていいの。ここで、みんなと一緒にいたいの」
「良くないよ。……小早、被害者である君にこんな重いお願いをするのは本当に申し訳ないんだけどね。でも、あれでも僕たちの大切な妹なんだ。あの子を殺人鬼にしないでほしい」
「そうだよ。それに、中山教官も桜木教官も関も、みんな君が目を覚まさないから、死にそうな顔をして待っているんだよ」
「……だって、みんなを助けられなかった私のことなんて、恨まれて、殺されて当然だもん……!」
「そんなこと言わないで。僕たちの中山教官に、もうこれ以上あんな辛い思いをさせないでくれ。……僕たちの分まで、教官の傍にいてあげて」
「待って……っ!」
そう言いかける間もなく、2人から背中を強く、突き飛ばされるように押されました。
弾き飛ばされて振り返ると、光の向こうで関内くんと安宅くんが、何か大切な言葉を私に投げかけていました。
「待って! なんて言っ――」
すべてをかき消すような強烈な眩しい光に全身が囲まれ、私は思わずぎゅっと目を閉じました。




