冷たくなった暖かい手
桜木が軍の事情聴取へと連れ出され、今日はもう病室に戻らないらしい。
「関、お前も大丈夫だから、眠れる時に少しは目を閉じて休めよ」と声をかけてはやったが、関が実際に眠る姿など一度も見ることがなかった。
俺のほうは、処置の痛覚と薬の影響でまだうつらうつらと意識が混濁している時間帯もある。
――だが、小早は、一向に目を覚まさない。
病院側の医療として施せる処置はすでにすべて尽くしたという。あとは本人の生命力にかけるしかないが、もしも明日になっても目を覚まさなければ、遠方から親御さんを呼び寄せなければならないと告げられた。
せめてもの頼み込みとして、病室を同じ部屋にしてほしいと病院側に無理を言い、どうにか小早と同じ空間にベッドを並べてもらうことができた。
関が、差し入れの食事をとるために席を外した、ほんのわずかな隙。俺は這うような思いで体を起こし、小早のベッドへと近づいて静かに声をかけた。
「……小早。あの時、ちゃんと連れて帰ってきただろ。……だから、そろそろ目を覚ましてくれよ……」
その青白い肌は、あまりにも透明で、今にも小早という存在そのものがするするとこの世から消えていってしまいそうな、言いようのない恐怖を俺の胸に突き刺した。
本当は腹部の縫合が開くため、起き上がることなど許されていないし、起き上がってはいけない身体だ。それでも、今この瞬間に小早の手を強く握りしめなければ、本当に消えてしまうような気がしてならなかった。
小早の手は、嘘みたいに冷たかった。ひんやりとしたその指先は、温度を失っていくばかりだ。
小早はいつも、体温が高くて、どこかあたたかい子だったのに。
「……小早、みんな待ってるぞ。……俺も、桜木も、関も、みんな……お前が帰ってくるのを待ってるんだからな……」




