駆けつけた小早
「桜木教官!」
「小早」
病院に到着するという連絡を受け、玄関へ迎えに出ると、タクシー降り場からこちらに向かって息を切らせて走ってくる小早の姿が見えた。
「大阪から帰ってきて、そのまま直で来たのか」
「はい……! 中山教官は……?」
「……一命は取り留めた」
それ以上、詳しい容態を伝える言葉を飲み込む。これ以上この子の心を追い詰めるわけにはいかない。
小早の今回の出張は、関西圏での小規模戦闘で負傷者が相次ぎ、通常パトロールなどの人員が回らなくなったための急な応援だった。まだ若い身でありながら、慣れない土地で1ヶ月間、極限の緊張状態のまま気を張り詰めていたのだろう。その顔には隠しきれない疲労の色が濃く滲んでいた。
「よかった……本当に、よかった……。で、いま中山教官は?」
「ICUだ。……だが、お前も大阪での出張帰りですぐ来たんだ。いいから、車の中で少し休め」
自家用車で病院に駆けつけておいて本当に正しかった。小早は「まだ起きている」と気丈に言葉を紡ごうとしたが、その目元には痛々しいほどの酷い隈が刻まれていた。助手席で横になるよう促すと、わずか数十分もしないうちに、糸が切れたように小さな寝息を立て始めた。心も体も限界を越えているのに、それでも教官の安否を確認するまで休もうとしなかったその姿が、痛いくらいに胸を突いた。




