回顧:守るべき子供たち
「ただいま。桜木ー!」
静まり返った山奥の別荘に、大量の荷物を抱え込んだ中山の声が響き渡る。
「おい中山、少しは落ち着けよ」
「最初から小早は冷静だったろ? どうだ! 俺の自慢の生徒は!」
「調子に乗るな……だが、見事な回答だったさ」
リビングへ移動すると、中山が慣れた手つきでテレビの電源を入れた。画面にはちょうど、夜の報道番組のニュースキャスターが険しい顔で映し出されている。
「小早と関は、意図せず全国デビューだな」
不安そうに画面を見つめる関に、中山が落ち着き払った声で返す。
「大丈夫なんですか……?」
「あぁ。あの場にいた連中には全員、強制的に名刺を出させた。弁護士を通じて抗議文を叩きつけ、士官学生保護法違反の申請も済ませてある。おまけに明日の朝一で広報部が公式の会見を開く。もうあいつらに手出しはさせないさ」
手元のパソコンを開き、ネット上の世論をざっと確認する。案の定、画面には先ほどの生中継に対する膨大なコメントが並んでいた。そこにあったのは、マスコミの卑劣な取材に対する激しい批判と、理不尽に晒された生徒たちを擁護する声の嵐だった。
「よくやった。……関、お前もな」
画面に釘付けになっていた関が、ふっと驚いたように目を見張り、どこか嬉しそうな、雪解けのような表情を浮かべる。――あぁ、こいつ、こんな顔もするんだな。守るべき子どもたちのそんな素顔を少しだけ見られた気がして、俺は胸の奥の澱がわずかに軽くなるのを感じた。




