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回顧:何年経っても
応援の部隊が撤収し、自分たち以外の人間が帰還する日。わざわざ日吉大佐が俺たちの病室まで足を運び、別れの挨拶に訪れてくれた。
「すみません。こっちから出向くべきところを……」
「いや、いいんだ。怪我人はあんまり動くもんじゃない。それにしても、思っていたより回復が早くてよかった。本当に無理はするなよ。体をちゃんと治して、長期の休みができたら2人で北海道へおいで」
「……ありがとうございます」
ベッドの脇に立ち、労わりの言葉をかけてくれるその姿に胸が熱くなる。大佐はふっと表情を和らげ、どこか心配そうな視線を隣のベッドに向ける。
「あと、頼むまでもないと思うが……中山のことを見てやってくれ。あいつは昔から、なかなか自分からは弱音を言い出さないから」
「はい……」
「そして、桜木。お前もちゃんと自分の弱音をあいつに言うんだぞ」
「……はい」
震えを帯びた俺の返答に、日吉大佐は優しく諭すようにうなずいた。その一瞬、目の前に立っているのは軍の最高幹部などではなく、かつて士官学校で俺たちを泥まみれになりながら導いてくれた、あの厳しくも温かい「教官」そのものだった。幾星霜の時を経ても変わらないその背中を前にして、張り詰めていた感情の澱が、また静かにほどけていくのを感じた。




