回顧:生存確認
「桜木さん。カウンセリングのお時間です。行きましょう」
あの日、あの場所にいた生徒や教員の生き残りは、定期的なカウンセリングを受けることが義務付けられていた。後追い自殺を選ぶ者が後を絶たなかったからだ。その現実が、俺たちの受けた傷の深さを嫌というほど突きつけてくる。
同室のベッドに置かれた中山の薬の量を見た時、血の気が引くような思いがした。俺が動けなかったあの1週間、中山がどれほど凄まじい絶望と責任を一人で抱え込んでいたのか。その大きさをまざまざと見せつけられた気がした。小早のことも重なり、このままでは中山まで自分の前からいなくなってしまうのではないかという、言いようのない恐怖が胸を締め付ける。だからかもしれない。俺は最近、意味もなく中山に話しかけるようになっていた。ただ生存を確認するように、声をかけずにはいられなかった。
「中山。今日は、小早のところか?」
「ああ」
「そうか……。小早の体調、どうだ?」
ベッドの上から尋ねると、中山は今日病棟で聞いてきたあの子の様子を淡々と語り始めた。
生徒たちを導き、守ってやるべき立場のはずなのに、蓋を開けてみれば、俺たちは生き残った子どもたちに教えられ、支えられてばかりだ。偉そうな説教を垂れたり、指導者面をしたりしているが、本当に説教したい相手なんて、一番情けない自分自身に決まっている。
今日あった出来事を噛り締めながら、ふと思う。
もしかしたら、生き延びた俺らにこうして子どもたちが示してくれている姿も、あの食堂や寮の瓦礫の下で散っていった亡くなった生徒たちが、不器用な俺らに向けてどうしても伝えたかったことの続きなんじゃないだろうか。守れなかった命の温もりに背中を押されながら、俺たちは今日も、崩れそうな心をどうにか繋ぎ止めて生きている。




