回顧:大人という不器用な生き物
翌朝、廊下で関の姿を見つけた。その憔悴しきった姿に言葉を失っていると、関は消え入りそうな声で呟いた。
――小早まで死んだら、私ももう生きていられないかもしれない、と。
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が冷たく凍りついた。これ以上、あの地獄を生き延びた生徒たちの心をすり減らさせてはならない。あの子たちにこれ以上の十字架を背負わせるわけにはいかない。そう頭では分かっていたのに、俺の口から出たのは、あまりにも冷酷で、突き放したような言葉だった。
「感傷的になっていたら、軍人なんて務まらない」
違う。本当はそんなことが言いたいわけじゃない。
――軍を辞めてくれ。もうこれ以上、お前まで辛い思いをさせたくないんだ。どうか命のやり取りから遠い場所で、普通に幸せになってくれ。
心の中ではそう叫んでいたのに、いざ言葉にしようとすると、自分の不甲巧さが邪魔をして、本当の想いは喉の奥で詰まり、どうしても形にならなかった。優しさのつもりで放った冷たい言葉は、ただ関を傷つけただけだった。関は何も言わず、ただ黙って俺に背を向けると、静かに歩き出してしまった。引き止める資格すら、俺にはなかった。
自室に戻ると、いつの間にか目を覚ましていた中山が静かにこちらを見ていた。俺は関とのやり取りを、絞り出すように掠れた声で中山に告げた。
それを聞いた中山は、何も言わずにただ俯いた。
――俺たちは、何をやっているんだ。守ると誓った生徒すら守れず、生き残った子どもの救いにもなってやれない。
あふれ出る自責の念をもう抑えきれなかった。ベッドの上で、俺たちは互いに情けない姿のまま、罪悪感に身を焼かれながら、声も出せずに数時間ただみっともなく泣き続けた。指導者として、軍人として、人として――積み上げてきた誇りのすべてが音を立てて崩れ落ち、俺のメンタルは完全に折れかけていた。
そしてその日の夜、上層部から告げられたのは、俺たちに対する「しばらくの間、任務を離れて休養を取れ」という命令だった。動き続けることすら許されない無力感のなかで、俺たちの傷口は、ただひたすらに重く痛み続けていた。




