回顧:止まらない謝罪
翌朝、車椅子を走らせて仕事場へ向かった俺を待っていたのは、冷酷な現実だった。日吉大佐から告げられたのは、中山が限界を超えて倒れたという知らせだ。周囲の教官たちの間には、ただでさえ人手が足りない中で「また仕事が増える」という殺伐とした重い空気が淀んでいる。誰も彼を気遣う者などいない。
「桜木、同室だから見てやってくれ。互いにな」
夕方、帰り際に日吉大佐からそう言われ、指定された医務室兼用の自室へと戻る。ドアを開けると、そこには細い点滴のチューブに繋がれ、ベッドに横たわる中山の姿があった。結局、俺たちはまた同じ部屋に戻ってきたらしい。
「中山」
車椅子をベッドの脇まで寄せ、掠れた声で名を呼ぶ。
「……さくら……ぎ。お前、大丈夫か……?」
薄らと湿った目をわずかに開き、中山がこちらを見上げてくる。その瞳は完全に焦点を失いかけており、自分の身すら省みない痛々しい姿に胸が締め付けられる。
「俺の心配より自分の心配しろよ」
「ごめん……本当に、ごめん……」
「謝らなくていい」
「ごめんなさい……」
「いいから、もう寝ろ」
何度言葉を尽くしても、こいつはずっと謝り続けた。俺が「お前は悪くない」と言っても、「大丈夫だ」と諭しても、もう十分だと言葉を遮っても、謝罪の言葉は一向に止まらなかった。心ですり潰された痛みをすべて吐き出そうとするかのように、中山は全身をわなわなと震わせ、起き上がろうと暴れそうになる。車椅子に縛り付けられた俺の体では、この暴走を止めることすらできない。これ以上は限界だと判断し、俺は外へ声を張り上げて助けを呼び、再び強い睡眠薬を投与してもらった。
静まり返った部屋で、薬の効き目で再び昏睡へと落ちていく相棒を見下ろす。
「中山……」
喉の奥がつかえ、それ以上の言葉は何も出てこなかった。
ここまでの数日間、あいつは一人でどれほどの地獄を背負っていたのだろう。生徒や仲間の死の重圧と向き合い、周囲からの冷たい批判に晒され、自分の身体から血が滲み、ボロボロになってもなお、眠るすらうつろに許されなかった。想像を絶する凄惨なプレッシャーのなかで、あいつは心も体も完全に壊れてしまったのだ。
俺は――班員の見送り以外、あの地獄のベッドでただ眠り続けていただけだったというのに。あいつにばかりすべての重荷を背負わせていた現実が、痛いほどに突き刺さる。壊れゆく同期の姿を目の当たりにしながら、俺にできることは、ただ無力に震えることだけだった。




