回顧:見送り
翌日。生き残れなかった俺の生徒たちは、それぞれの保護者のもとへ――冷たくなった無言の帰路についた。
いてもたってもいられず、ベッドから這い出ようとした俺を、駆けつけた顔見知りの医者が青い顔で制止する。だが、行かなければならなかった。ここで動けぬことを言い訳に目を背けたら、俺は一生、教官を名乗る資格すら失う。激しく脈打つ腹部の傷口から血が滲み、熱を持った内臓が引き裂かれるような激痛が走るが、そんなものは今の絶望の前では感覚すらなかった。
車椅子を無理やり押させてもらい、見送りの場へとたどり着く。だが、棺を抱え、泣き崩れる保護者たちの姿が視界に入った瞬間、喉の奥から熱いものがこみ上げた。
「ゔっ……!」
耐えきれずに押し殺したうめき声を漏らした俺を見て、医者が慌てて腕を掴んで引き留める。
「桜木教官、もはや限界だ……無理をしないで下さい! 傷が開きかけてますよ、血が……!」
耳に入る医者の必死の制止も、どこか遠くの出来事のように霞んでいく。痛むのは腹か、頭か、それとも胸の奥底か。すべてがぐちゃぐちゃに混ざり合い、思考の輪郭が保てない。俺がもっと早く気づいていれば。俺がもっと強ければ。あの日の判断一つで、この子どもたちの未来があったはずなのに、今、目の前にあるのはただ取り返しのつかない現実だけだ。
謝罪の言葉すら喉に詰まり、ただ視界が涙と痛みで歪んでいく。我が子を失った親たちの泣き叫ぶ声が頭の中で木霊し、俺は自分の無力さと、消えない後悔に押し潰されそうになりながら、その場で崩れ落ちるように意識を暗い底へと沈めていった。




