回顧:無事なのか
「中山っ…。」
目を覚ますと、視界の端に映った中山は目を真っ赤に腫らしていた。
「桜木、どうだ?」
掠れた中山の声に、反射的に起き上がろうと上半身を起こしかける。だが、腹部を貫く激痛に肺の空気が押し出され、声にならないうめき声が漏れた。
「はぁっ……動けねぇな……」
「傷が開くから動くな」
それ以上動かぬよう、中山に静かに布団を押し返されて再びベッドに寝かされる。その時、微かに乱れた中山の袖の隙間から、腕に巻かれた痛々しい包帯が目に飛び込んできた。……俺だけじゃない。こいつ自身も、あの襲撃の混乱の中で少なからず傷を負っていたのだ。
「でも……お前……寝てないだろ……」
「まあ……そうだけど……」
中山の視線がスッと下に落ちる。その表情は、怪我の痛みなど微塵も気にしていないように見えたが、それ以上に――休むことすら強烈な罪悪感に苛まれ、許されないと言わんばかりの痛切な絶望の色を帯びていた。目の下の深いクマは、あの夜、徹夜で発表の準備に追われていた時よりもさらに深く、やつれ果てていた。
「寝ろ……ここなら……大丈夫だ。お前だって……怪我人だろ……」
これ以上あいつをすり減らさせるわけにはいかない。そう思いながら、ベッドの端をぽんぽんと弱々しく叩く。
そこに、中山がたまらずといった様子で顔を埋めた。
ぐっと押し殺されたような、震える息が漏れる。声を漏らさないように必死に喉の奥で押し込めているのが分かった。その姿を見た瞬間、胸の奥底が冷たい泥で満たされるような、言いようのない恐怖と絶望が広がっていく。
――ああ、そうか。
守れなかった。助けられなかった。
あの夜、自分たちが仮眠をとっている間に、どれだけの生徒が冷たい瓦礫の下で消えていったのか。食堂にいた生徒も、寮にいた生徒も、あの時、自分達のせいで。
「……中山、他の奴らは……」
震える声で、絞り出すように問う。教え子たちは、同僚たちは、無事なのか。誰も返事をしない。その沈黙こそが、最も残酷な答えだった。
分かっていたはずなのに、心のどこかで奇跡を願っていた自分が嫌になる。自分のせいで、あの時の判断の遅れのせいで、守るべき未来をすべて踏みにじられたという事実が、重く、冷たく俺たちの全身を押し潰していくのだった。




