安宅と共に
涙を目に浮かべたのを悟られないように下を向いた小早に、俺は何と声をかけていいのか分からなかった。
「安宅は神力の出力がある生徒だった。神力が多い方なのも理由の1つだが、緩急が上手かった」
「安宅君は周りも見えていて、その場ですぐ犠牲を抑えて勝つ手段を思い浮かべられる人でした」
「ああ、そうだったな。もし生きていれば安宅も誘っていたのにな。本当はお前ら3人で戦うのが一番しっくり来るんだ。未だにお前ら2人が戦う姿を見るとそこに安宅がいる気がしてしまう」
「桜木教官…」
俺も未だに安宅の影を何処かで追っているのかもしれない。
「教え子に対する気持ちに優劣をつけたくないが、あの頃から俺は安宅も関も小早も本当は傍に置いておきたいと思っていた。あの時は教官専任だったから、隊を組むことは出来ないし、ただのもしも話だったが。」
らしくないことを言っている自覚はある。だが小早には覚えていて欲しかった。小早の過去に何があろうが、小早は大切な教え子で、一緒に戦いたいと思う神力使いの1人だと。
「桜木教官は私のこと必要としてくれるのですか?」
目をまん丸とさせて聞いてくる小早を見ると、
「ふふっ…何を聞いていたんだ?当たり前だろ?」
あまりにも何も分かってなくて笑ってしまった。小早、俺だけじゃない中山も関もお前を必要としている。例えお前がそれを理解出来ず戸惑っていてもなんども俺たちはお前を呼ぶだろう。
「笑わないでください…!桜木教官は真意が読めなくて困ります…」
「すまんかったな」
「でも…私たちを平等に見た上で判断してくださったのは感謝してます。士官時代も教官は常に誰に対しても平等に厳しかったですよね」
「厳しかったは余計だ。まあ否定はしない」
小早は赤くなった目を細め、
「だから、私は教官の言葉を信じます。私は必要とされる場所に行きます」
小早はそう立ち上がり言った。
「ここは中山の班で、安宅の班ではない」
「分かってます」
「覚悟は決まったんだな。最初に聞きたいのは中山だろう。早くきちんと言葉で伝えてこい」
「…! はい!」
のちに聞いた話だが、小早は「私と関がいる場所が安宅君のいるはずだった場所。それなら私達の心の中の安宅君と共に中山班にお世話になる」と、中山にそう伝えて正式に加入を決めたらしい。不器用で臆病だったかつての教え子は、こうして自分の足でしっかりと次の空へと踏み出していった。




