165/269
薬効
点滴の薬効が薄れてきたのか、小早はうっすらとそのまぶたを持ち上げた。だが、意識の焦点は定まらず、脳を揺するような強い倦怠感と麻酔の余韻で、頭がうまく回っていない様子だった。薬の切れ目から、固定された左腕の奥底が再びズキズキと痛み始めているのだろう。青白い顔をわずかに歪め、乾いた唇をかすかに震わせる。
「……私も……っ、行く……」
朦朧とする意識のまま、小早は鉛のように重い体を起こそうと無理に腕を動かそうとした。その無謀な姿に、胸の奥が冷たく締め付けられる。こんな満身創痍の状態で、前線になど戻せるわけがない。ダルそうにぐったりとしながらも仲間を追おうとするその姿は、痛々しくて見ていられなかった。
そんな小早の肩に、中山教官が静かに手を置いた。
「大丈夫だ。ちゃんと帰ってくるから」
低く、有無を言わせぬ落ち着いたその声には、小早の焦りを宥め、これ以上無理をさせないための確かな優しさと覚悟が宿っていた。
小早をその場に残すことにした。戦場に戻らなければならない焦燥と、このボロボロのあいつを一人置いていく罪悪感で引き裂かれそうになりながら、俺は最後の気力を振り絞る小早から無理やり視線を外し、中山教官や桜木と共に再び牙を剥く前線へと踵を返した。




