野戦病院
野戦病院のテントの入り口が激しく捲り上げられ、中山教官と桜木教官が慌ただしく足を踏み入れてきた。周辺の負傷者たちの応急処置や保護を最後までやり遂げ、ようやく戻ってきたらしい。二人の戦闘服や防壁の継ぎ目には、さっきまで激戦を繰り広げていた痕跡である黒煙の汚れや硝煙の匂いがまだ色濃く残っている。
「小早の様子は……!」
中山教官が息をつく間もなく、俺が座る簡易ベッドの脇へと急ぎ足で駆け寄ってきた。その後ろから、桜木教官も青ざめた顔で続く。
ベッドの上では、強力な鎮痛薬と麻酔が回りきったおかげで、さっきまでの激痛による痙攣や過呼吸が嘘のように消え失せていた。ぐったりと力を抜いた小早は、まるで命の火が消えかけたように微動だにせず、深い眠りに落ちている。砕けた骨を固定し直された左腕は痛々しくぐるぐる巻きにされ、その顔色は驚くほど白かった。
「……やっと、薬が効いて眠ったところです」
俺がそう絞り出すと、中山教官は険しい顔のまま小早の眠る姿を見下ろし、小さく息を吐き出した。無事に全員を連れ戻せた安堵と、それでもなおあまりに大きすぎた代償への焦燥が、その背中に張り付いているように見える。
あんな無茶な突撃をして、自らの古傷ごと左腕を粉々に破壊されて、それでもなお仲間のために前線を駆けたやつの寝顔は、子どもみたいに無防備で、見ていて胸が締め付けられるほど痛々しかった。
「よく持ちこたえてくれた……」
桜木教官が掠れた声でぽつりと言い、ぐっと拳を握りしめる。
俺は麻酔でフワフワとしたまどろみの中にいる小早の冷えた手を再び包み込み、もう二度とあんな危険な真似をさせないようにと、静かに自分の手のなかに力を込めた。




