一時の安らぎ
医療スタッフが迅速に鎮痛薬の投与と点滴のルートを確保してから数分。いつまでも終わらないかのように思えた地獄のような激痛の波が、ようやくわずかに引き始めた。
「……はぁっ、はぁっ……」
それまで過呼吸のように浅く荒々しかった小早の呼吸が、嘘のようにゆっくりとした深いものへと変わっていく。全身を強ばらせていた筋肉からガチガチの力が抜け、ベッドに沈み込むようにぐったりと身体の力が緩んでいくのがわかった。
頭を焼くような電撃痛や、骨同士が擦れ合うおぞましい疼きが、強力な薬の力によって徐々に遠ざかっていく。脂汗でびっしょりと濡れていた額から緊張が和らぎ、血の気の引いていた青白い顔色にも、ほんのわずかに落ち着きが戻ってきた。
ただ、その代わりといわんばかりに、特有の強い倦怠感と眠気が一気に小早を襲ったらしい。まぶたがトロンと重たそうに下がり、焦点の定まらなかった瞳が、ふうっと力を失うように閉じかけていく。痛みから解放された安堵と、極限状態を駆け抜けた疲労が一気に押し寄せたのだろう。頭がフワフワと浮遊するような、現実感のないまどろみの中へと彼女は沈みかけていた。
「……小早?」
俺はまだ震えの残る彼女の手をそっと握りしめたまま、名前を呼んだ。
返事をする余裕すらないのか、小早はうっすらと目を開けたものの、すぐに力なくまぶたを伏せ、浅い寝息を立て始める。薬が効いてようやく痛みが和らいだのだと頭では理解しながらも、そのあまりにも消耗しきった姿を見ていると、胸の奥が締め付けられるように痛んだ。




