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殿

敵の弾幕と爆煙が渦巻く前線へ、俺と桜木がようやく合流したとき、すでに戦場は最悪の崩壊を迎えていた。血と硝煙の匂いが鼻をつく中、満身創痍で踏み留まる隊員たちの姿に視線を走らせる。これ以上ここに留まれば、全員がすり潰されて終わる。

「よくやった! 小早は相原軍曹と片倉一等兵を。関は菊名伍長と成瀬二等兵を連れて退却だ!」

迷っている暇などない。俺が低く、しかし一帯に響き渡る声で叫ぶと同時に、小早が顔を歪めた。左腕の固定具が砕けて無くなっている。骨折箇所に攻撃を受けたんだ。小早の腕は、もうまともに動かせる状態ではないはずだ。それでも小早は一切の迷いを見せず、痛みを奥底へと飲み込んで、ボロボロになった相原と片倉の体を両腕でしっかりと抱え込んだ。隣では関が、同じく傷ついた菊名と成瀬を必死の形相で支え上げている。

「行け! 殿は俺と桜木が引き受ける!」

指示を飛ばすと同時に、俺は桜木とアイコンタクトを交わした。数々の修羅場をくぐり抜け、幾度も殿を務めてきた俺たちの経験と連携がものを言う。追撃を仕掛けてくる敵の群れに対し、俺と桜木は最小限の動きで致命的な弾幕をいなし、正確無比な迎撃で敵の足を完全に止めてみせた。

背後では、小早や関が負傷者を連れて必死の退却を続けている。俺たちが築いた鉄壁の盾の裏で、明光隊と中山隊の生き残りがどうにか安全圏へと押し出されていくのを確認し、俺は冷や汗を拭う暇もなく、桜木と共に最後尾を固めながらその場を離脱した。


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