激痛
絶望的な戦場を駆け抜け、私は崩壊しかけている明光隊の陣形へと飛び込んだ。
「明光隊、退却を! 相原先輩!!」
声を限りに叫ぶと、相原先輩は顔を真っ青に染め、半狂乱の状態で私にしがみついてきた。
「小早! 李子は……李子はどこにいるの!?」
「南野が運んでます、生きてます! だから早く後方へ――!」
しかし、パニックに陥った明光隊はすでに指揮系統が完全に機能不全に陥っていた。誰もが恐怖と混乱に呑まれ、指示を聞く余裕すら失っている。その最中、バランスを崩して墜落しかけている夏純の姿が目に飛び込んできた。反射的に体が動く。
「夏純っ!」
咄嗟に夏純を庇いに入った瞬間、背後から襲いかかってきた敵の凶刃が、私の左腕を正確に捉えた。衝撃の直後、激しい痛みが左腕を焼き尽くすように走った。今の一撃で、固定具が完全に砕け散ったのがわかる。骨折していた箇所に直接攻撃が刺さったのだ。視界が白濁し、あまりの激痛に喉の奥から脂汗と情けないうめき声が漏れそうになるのを、歯を食いしばって必死に飲み込んだ。
「小早っ!」
血まみれの視界の端で、片倉先輩が折れ曲がった腕をかばいながら私を庇おうと飛び出してきた。だが、今の彼女の体にそんな余裕はない。
「片倉先輩は夏純と相原先輩を……っ!」
私は痛みに震える左腕を力なく抱え込みながら叫び、すぐ傍で防壁を張っている関と、同じく肩で激しく息を荒げながらも被弾の痛みに顔を歪めている菊名先輩の援護へと滑り込んだ。菊名先輩もどこかをやられている――誰も彼もが限界だ。
「関、退路を拓くよっ!」
「分かってる!」
一瞬の迷いもなくハモった二人の神力を一点に集中させ、私たちは目前の敵の群れへと無謀なほどの突撃を仕掛けた。装甲が悲鳴を上げ、回路が焼き切れるような痛覚を無視して、私たちは無理やり敵の包囲網をこじ開ける。
「早く、あそこから出て!」
残された力を振り絞って退路を示し、パニックに陥った明光隊を無理やり後方へ押し出すように逃がす。しかし、満身創痍の彼女たちの足代わりや機体は思うようにスピードが上がらない。逃げる背中を守るため、殿を務める私と関の背後にも、容赦なく敵の牙が迫りくる。守るべきものが多すぎて、退きながらの戦闘はあまりにもキツく、息が詰まりそうだった。




