完全崩壊
無線越しに響いた悲鳴を追い、全速力で戦場へ飛び込んだ俺の眼前は、地獄のような光景だった。
明光隊の陣形は完全に崩壊し、黒煙と敵の群れに蹂躙されている。相原軍曹は「李子が!」と普段の冷静さを微塵も失い、見る影もなく取り乱して叫んでいた。その隣では菊名伍長が「相原、しっかりしてよ!」と怒鳴り散らし、部隊の統率すら取れなくなっている。
見れば、成瀬二等兵は被弾して頭から血を流し、機体を揺らしながら墜落寸前だ。さらに、隊を支えるべき援護手が不足しているせいで、片倉上等兵まで前線に出ざるを得なかったのだろう――その腕はあり得ない方向にグニャリと折れ曲がり、血に染まっていた。
「くそっ……!」
頭が真っ白になりそうな焦燥を押し殺し、俺は小早が戻ってくるよりも先に単騎でその渦中へと突撃した。圧倒的な物量の敵をどうにか薙ぎ払い、これ以上被害を広げまいと防壁を展開して避難させようとする。だが、致命的に援護手が足りない。背後から死角を突かれ、俺の体も激しい衝撃と共に浅く被弾した。皮膚がヒリつくような熱量が走る。
これ以上は持たない。俺一人の力では、この崩落を押し留めることなど到底できない。
「小早……! 早く、戻ってきてくれ……っ!」
喉の奥から絞り出したその絶叫は、轟音のなかにかき消されていく。誰も彼もが傷つき、折れ、血を流していく絶望的な戦場で、俺はただ仲間を守るために、必死で銃口を敵の群れへと向け続けた。




