158/269
助ける者
戦場は私たちの感傷を待ってはくれない。周囲ではいまだに激しい爆音が轟き、味方の防衛線が崩れかけようとしている。
「南野が連れて帰ってあげて! 私は他のみんなをっ!」
小早が血まみれの顔を上げ、叫んだ。
その瞳には、かつての弱さや迷いは微塵もなく、ただ圧倒的な自己犠牲と、これ以上誰も死なせないという痛々しいほどの決意だけが焼き付いていた。
「小早っ……!」
引き止めようと伸ばしかけた私の手は、しかし彼女の決断を止めることができなかった。小早はそのまま単騎で、絶望的な敵の渦中へと再び飛び込んでいってしまう。
行くしかない。ここで私が立ち止まれば、腕の中で冷たくなりかけているこの命の最後の糸すらも断ち切ることになる。
「しっかりしてください、鴨居先輩……っ!」
私は涙を堪え、失血死寸前の彼女の体を必死に抱え上げると、医療班の待つ後方へと向かって死に物狂いで駆け出した。




