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桜木と中山

関目線―――


「申し訳ない、取材は広報部を通じてのみできる決まりになっているので、お引き取り願おうか。」

壁を切り拓くように聞こえた聞き覚えのある声。

顔を上げると中山少佐たち数人の教官方がいた。

「関早く、王子を車へ…!」

「はい…!」

教官方が道を作って下さったおかげで車まで報道陣を掻き分け走った。さっきと違って空気が吸える感じがする。抱き抱えた細い体を抱く腕に力を入れる。

目の前に止まった車。

桜木教官…!

「関、王子大丈夫か?」

「はい!」

大丈夫か?という言葉を(元)指導教官から初めて聞いた。

「くっそ…中山が自分で運転しろよ。」

報道陣の車が後をつけてくるのが分かる

「関、カーテンしめろ。後ろも前もな。」

「はい!」

そうだ、この車って対報道陣用の…!

カーテン越しから桜木教官の声がくる。

「マスゴミめ。普段から偏った報道するから気に食わねぇと思っていたが…。

関、大変だったな。」

本当に桜木教官か?

おれの知ってる教官は血を吐いた生徒すら蹴り飛ばして「戦場だと死ぬぞ。」とか言う人じゃないか。体罰暴言パワハラ上等。鬼教官だろ。

「どうした?関。」

「…叱らないのですか?いつものように。」

「中山に止められた。」

そういえば中山少佐と桜木教官は同期か。


少し間が空く。

ため息をついた桜木教官は

「俺らがまだ中尉だった頃の話聞いたことあるか?」と唐突に聞いてくる。

「…ないです。」なんだ?

「中山と俺とあと3人で班を組んでいた時期がある。全員同期でな。仲良かったんだ。班長は司令と参謀も兼ねてた攻撃手。あと援護手専任のやつと衛生手も兼ねてた援護手。俺は攻撃手専任で、中山は攻撃手と援護手を兼ねていた」

中山少佐は両刀手(攻撃手と援護手を兼ねた人のこと)だったのか…。

「俺らは優秀だと言われていてな、各地の基地で訓練をさせてもらっていた。俺以外は各地の隊員と仲良くなっていたようだ。俺はお前の知っている通り人とは群れないからな。

ある日、着任していた基地の管轄区域で外来危険物体の攻撃があったんだ。

それはおれが今まで体験した中で1番激しかった。

上から降り注ぐ弾丸、相手の上をとろうにも取れず、ただ防戦一方になった。

仲間のことなんか気にする余裕のなかった俺は班長の静止を振り切り、相手の懐に無理矢理飛び込んだんだ。

自分の命を犠牲にして巻き込んで死んでやろうと。昔は自決用の物をもっていたからな。

相手の内部に飲みこれてな、もう今だと思って自決しようとしたら、最初にそんな俺を助けに来たのは中山だった。

あいつ俺みた瞬間に笑っていたんだよ。

そしてあいつが俺とあいつの体をシールドで保護した上で爆発したんだ。

中山はバカなことに神力使い果たしてしまって、スイッチが切れたように動かなくなったんだ、シールドは強固で俺自身内部から攻撃しても割なくて、仲間はその爆発で見えた心臓部狙ってバカスカ打ってて俺らは宙に浮いていた。」

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