保護者
ぐちゃぐちゃにかき乱された感情を抱えたまま小早の隣を歩く俺たちに、周囲の視線が痛いほど突き刺さる。
仮陣営の通路を抜けていく途中、すれ違いざまに他の部隊の兵士たちが「あの、中山隊の関中尉と王子中尉ですか……?」とひそひそと声をひそめて囁き合ったり、遠巻きにコソコソと指を差したりするのが嫌でも耳に入ってきた。
天照隊からの出戻りという俺の過去の悪評と、今回の成果に対する賞賛……人によっては立川士官学校のあの悲劇のことも知っているようだ。
周囲の好奇の視線は居心地が悪いなんてものではない。皮膚がヒリつくような居心地の悪さに、俺は無言のまま険しい顔で歩幅を早めざるを得なかった。小早もまた、さっきの件を引きずっているのか、俯いたまま小さく縮こまっている。
「おい、いつまでそんなところでコソコソやってんだ。明日の作戦、もう一度見直すぞ」
ピリついた空気を切り裂くように、低く落ち着いた声が降ってきた。振り返ると、そこには桜木教官が腕を組んで立っていた。
その隣には、いつの間にか追いついてきた中山教官の姿もある。
桜木教官はわざとらしく周囲の視線を遮るように俺たちの前に一歩踏み出し、中山教官もまた、小早の様子を遠目から一瞥すると、さりげなく俺たちと好奇の視線との間に体を割り込ませた。
「……すまない、少し急ぎの確認事項があったんだ。邪魔をしてすまなかったな」
中山教官が低く淡々とした声音で周囲の兵士たちを軽く牽制すると、噂話をしていた者たちは気まずそうに目を逸らし、足早に散っていく。
ふたりが意図的に、この気まずい空気と野次馬の視線から俺たちを庇い隠すように立ち回ってくれているのは明白だった。 言葉には出さずとも、そのさりげないフォローに救われる思いがしながら、俺はかすかに息を吐き出し、うつむく小早の肩をそっと庇うようにしてその場を離れた。




