痛々しい
明光隊のテントから聞こえてきた激昂と、凍てつくような沈黙。
その一部始終は、少し離れた場所で小早の帰りを待っていた俺の耳にも、痛いほどハッキリと届いていた。あいつがどんな顔をしてあの場に立ち、どんな目で見送られて出てくるのかを想像するだけで、胸の奥が冷たく締め付けられるようだった。
やがて、トボトボと重い足取りでテントから出てきた小早の姿が見えた。
まだ完全とは言えない、少し青白い顔色のまま、あいつは俯いて歩いてくる。昨日までの凄まじい戦闘の疲労と、大切だった場所から決定的に弾き出された痛みが、その小さな体を痛々しく揺らしていた。
「……小早」
思わず声を漏らしながら歩み寄り、何か言葉をかけようと手を伸ばしかけた俺に、小早はふっと小さく、掠れた笑みを向けた。
「……関。……とりあえず全員生きてて良かった。体の欠損も、無さそうだし……」
自分自身がボロボロで、さっきあんなトゲのある拒絶を浴びせられてきたというのに、あいつはまだそんなふうに、他のやつの心配ばかりしている。その切なすぎる笑顔の裏にある痛みが痛いほど伝わってきて、俺の胸の中はぐちゃぐちゃにかき乱された。守りたいのか、これ以上傷つけさせたくないのか、自分でも感情の整理がつかない。怒りとも焦燥ともつかないドロドロとしたものが、喉の奥につかえて呼吸がしにくかった。
――こういう時、どうして俺は気の利いた言葉一つかけてやれないんだ。
不器用な自分に歯噛みする。あいつが本当に求めている優しい言葉や、絶妙な距離感での気遣いなら、きっと安宅ならもっとうまく立ち回って、あいつの強張った心をフッとほぐしてやれたはずだ。安宅なら、こんなとき一体どういう顔をして、どんな声をかけたのだろう。そんなことばかりが頭をよぎり、俺は動かない口を開くことすらできぬまま、ただ痛々しく微笑む小早のそばで立ち尽くすことしかできなかった。




