変わらないでいたかった
「中山隊が帰ってきたぞ!」
「凄いよな。あれだけの神力を持ち合わせていたら俺もあんな風に活躍できるのかなぁ……」
周囲から聞こえてくるそんな浮かれた話し声が、やけに耳に障る。仮陣営の喧騒の中、私は自分のテントの端でうずくまっていた。
小早は、もうすっかり私にとって遠い存在になってしまった。あれだけ同じ隊で、いつもすぐ近くに居たというのに。
ふと頭によぎるのは、まだあの子が中学生だった頃の記憶だ。「紫陽さん! これ教えてください!」と、眩しいほどの笑顔で嬉しそうに私の名前を呼んでいたあの姿。士官学校を卒業したと知った時も「すごいな」とは思ったけれど、心のどこかで私は彼女の「先輩」で、あの子はいつまでも「可愛い後輩」のままだと、勝手に思い込んでいたのかもしれない。
――あぁ、神力がほしい。
頭では分かっている。あの子にはいま「中山隊」という完璧な居場所があって、もう私の助けなんて必要ないのだと。なのに、どうしてこんなにも、あの子の隣に立ってまた手を差し伸べてあげたいなどと思ってしまうのだろう。私に十分な神力さえあれば、あの高い場所へ駆けていく彼女の背中に、もう少しだけ手を伸ばすことができたのだろうか。
痛む腕をそっと押さえる。被弾したその場所は、少し動かすだけでも激しい痛みが走った。
……この流れてくる涙は、一体どこからきているのだろう。傷口の痛みからなのか、それとも、もう二度とあの頃の距離には戻れないという決定的な悲しみからなのか、自分でももう分からなかった。




