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明光隊出陣

たった一体の敵を相手にしているというのに、私たちは為す術もなく苦戦を強いられていた。

「っ……!」

「菊名先輩!」

声を上げ、左肩を押さえて顔を歪める先輩の傷口へ急いで神力を流し込み、治療を施す。……どうして。たった一人、小早が私たちの隊から抜けて、中山隊のほうへ行ったというだけで、これほどまでに戦況が狂ってしまうなんて。普段どれだけ彼女の存在と支えに甘えていたのかを思い知らされ、胸の奥が冷たく重くなる。

「くっそ……!」

「李子、楓はこっちに!」

相原先輩の切迫した声に促され、私は歯を食いしばる。相原先輩、菊名先輩、そして夏純が三方向から敵を挟み撃ちにし、全霊の攻撃を叩き込む。

「くっ……! はあっ、よっし……!」

死闘の末になんとか撃破したものの、残されたのは疲弊しきった体と、底をついたエネルギーだけだった。

「こちら明光隊、相原。……神力不足のため、これより帰還します」

無線越しに告げられる先輩の声は震えていた。無駄に神力を使い切ってしまい、私たちは完全に出鼻をくじかれてしまったのだ。

すごすごと引き上げる途中、同じくボロボロになって帰還する他の隊の兵士たちが、ふと空の一点を指さしてどよめいているのが聞こえた。

「おい、見ろよ……あそこ、凄くねえか?」

指し示された方向を、私は悔しさと気だるさを押し殺しながら見上げた。

――そこにいたのは、小早だった。

遠く離れた戦場の上で、彼女は迷いのない動きで次々と敵を圧倒し、私たちが何人掛かりでも苦しんだ相手をまるで当然のようにねじ伏せていく。同じ訓練を受け、同じ釜の飯を食ってきたはずなのに、今の彼女は私たちの手の届かない、眩しすぎるほど遠い場所に行ってしまったように見えた。

……すごいよ、小早は。あんなに余裕で、全部一人で……

心底からの感嘆と、どうしようもないほどの圧倒的な力量差。そして、私たちが足掻いても追いつけないかもしれないという焦燥感が、胸の奥でドス黒く渦巻く。その背中が少しだけ羨ましくて、同時に、ほんの少しだけずるいとすら思ってしまう自分の小ささが嫌だった。


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