コンビニ
廊下を歩いていた俺は、偶然前を通りかかった相原軍曹の姿をとらえて声をかけた。
「あ、相原軍曹」
「どうしました、桜木副隊長?」
「ちょっと買い出しに近くのコンビニへ行くので、小早と関の二人と、あと車を借りるぞ」
「分かりました! お気をつけて!」
緊張感を纏った彼女に軽く会釈を返し、俺は小早と関を伴って外へと向かった。裏手にある駐禁スペースで車に乗り込み、エンジンをかける。重苦しい空気を断ち切るように、俺は前を向いたままぽつりと口を開いた。
「お前ら、必死に頑張ってるな」
「……え?」
後部座席から、あいつららしくもない気の抜けたような、しかしどこか鋭い返事が返ってくる。
「いや、何となくな。……過酷な環境で、よくやってるってことだ。着いたぞ」
車を止め、俺はコンビニへと足を向けた。冷たい夜風が頬を打つ。数時間後には何百体もの敵がこの空を埋め尽くすかもしれないというのに、街の明かりは妙に穏やかだった。
必要な品と、中山に頼まれたいつものアイスを抱えて寮へと戻る。中庭のベンチに腰掛けていた中山を呼び出し、冷えたアイスを放り渡した。その様子を少し離れた場所から見つめる小早と関の顔には、どこか肩の荷が下りたような、張り詰めていた糸がわずかに緩んだような——そんな安心した表情が浮かんでいた。
……やれやれだ。
これから始まる血の匂いのする数日を前に、つかの間の静けさが、かえって不気味に重くのしかかっていた。




