夜のパトロール
「小早。今日のパトロール、お前は免除されていなかったか?」
出撃の準備をほぼ終えていた関が、私の隣に歩み寄ると、手慣れた手つきで私の腕の固定具をしっかりと締め直してくれた。
「今日、あの二人(南野と夏純)はメニューが結構キツかったし、少し代わってあげただけだよ」
「俺と菊名伍長で行っても良かったんだぞ」
「……なんで菊名先輩?」
「いや、あの人、神力が有り余って今一人で自主練してるぞ」
「相変わらず、あの先輩も民兵にしておくには勿体ないよね」
「あれぐらいの能力があるなら、士官学校くらい普通に受かっていただろうにな」
ふと、以前に聞いた話を思い出す。
「……前に南野に聞いたことがあるんだけど、菊名先輩って神力に『むら』がある人らしくて。波があるから、神力が出にくい日に適性検査を受けちゃって、当時は見つからなかったらしいよ」
「へぇ、そんなこともあるんだな」
「本当は大学に進学するつもりだったらしいんだけど、弟さんが士官学校に通っているし、ご両親もそういう軍関連の仕事に就いている人たちだから……どうしても似たような道に進んでほしかったみたい。それで色んな種類の精密検査を徹底的に受け直したら、ようやく神力のむらが判明したんだって」
関は「なるほどな」と小さく頷き、準備を終えた自分の武器を確かめるように手で軽く握りしめた。
夜の闇を含んだ空気はどこか冷たくて、肌を撫でる感触が心地いい。
「小早。腕はどうだ?」
「うーん。不便ではあるけど、だいぶ慣れてきたかな。関はもう神力の出力も元に戻ったみたいだね!」
「まぁ、俺は回復も早い方だからな。小早の方は、まだもう少しかかりそうか?」
「そうだね。感覚的にはあと少し足りない感じがするけど、日常生活で不自由するほどじゃないかな。腕の方はあと1ヶ月もすれば完治だってさ。」
「よかった。……で、今日パトロールを代わってまで参加したのは、単にあの二人を気遣っただけじゃないだろ?」
横を歩く関が、鋭くもどこか見透かすような目を向けてくる。私はふっと息を吐いて苦笑した。
「最近、全然パトロールをさせてもらえなかったし……たまには、こうして外の空気を吸って息抜きしたいなって思ったんだよ」
「一応、これでも仕事だぞ」
「分かってる。でも、基地の中にこもりっきりだと息が詰まる時もあるからさ。こういう静かな夜のパトロールが一番の気分転換になるんだよね。今日は遅番だし、空気も冷たくて気持ちがいいし」
「夜は冷えるんだから、時間になったらすぐ基地に戻るぞ」
「えー……」
不服そうに声を上げると、関は呆れたように笑い、二人きりの時くらい好きにしていろと言わんばかりに私の頭を軽く叩いた。
静寂に包まれた夜の空の下、私たちは並んで飛び続けた。




