明光隊の未来
「頑張らなきゃね、もっともっと。まだここには足りないものが多すぎる。経験だけじゃない……冷静さが足りないの。周りや戦況を正しく判断できないのは、いつか誰かを死なせてしまう」
「そうだね……ねぇ桜花、民兵派遣プロジェクトに参加してみない?」
寂しげに呟く相原先輩に、菊名先輩が思い切ったように語りかけた。……『民兵派遣プロジェクト』。聞き覚えのない言葉に、私は静かに耳を澄ませる。相原先輩は深いため息を漏らし、考え込むように視線を落とした。
「小早は聞いたことなかったかもしれないけど……民兵の戦力強化のために、各本部から一隊、戦場に優先的に派遣される部隊を選ぶことになったみたいなの。福岡第二は本部としても規模が小さくて、この前の戦いが事実上の初陣だったから、本部としては積極的に参加したいみたい。それで大佐から明光隊に話があったの。今聞いてるのは李子も含めて三人だけだけど……」
「リスクは高いですけど、経験値を積むという意味ではすごく良いプロジェクトですね」
「ただ……明光隊という『チーム全体』での派遣にはならないの」
「つまり、部隊からの『選抜』ということですか?」
「うん……」
納得がいった。国としても簡単に死なれては困る以上、候補者は個人の神力量やこれまでの評価から厳選されるはずだ。
「神力的には、相原先輩と菊名先輩なら全く問題なさそうですね。民兵の中でもトップクラスの神力量でしょうし。……他のメンバーは少し厳しそうですが」
頭の中で隊員の顔を浮かべ、冷静に分析する。神力が決定的に少ない夏純、衛生枠があったとしても一枠だろうから選ばれる確率の低い楓先輩。そして神力は標準的でも、まだ目立った功績のない鴨居先輩と片倉先輩……この四人が選ばれるのは現実的に厳しいだろう。
「桜花は『チームで活躍したい』って理由で、その話を断ったみたいなんだけどね」
あの大佐が、一度断られたくらいで諦めるとは思えないけれど。
「……選抜に参加して、そこで得たものを『チームに還元する』という考えはないのですか?」
「派遣には一年間の任期があるから……その間、うちの攻撃手が夏純だけになるのはあまりにも厳しいのよ」
「……確かに」
思わず頷く。関はあくまで緊急警備として一時的に配属されているだけで、いつ本来の部隊へ戻されるか分からない。私だって、この戦闘補佐隊としての任期が終わればこの基地を去る身だ。そうなれば、明光隊には決定的に前衛の攻撃手が不足してしまう。
「私は……自分がやれることを全てやり切った上で回ってきたチャンスなら、迷わず掴んでいいと思います。一時的にチームを離れることになっても、将来的に同じメンバーで再編成することだって不可能ではありません。……特にここは、軍内でも珍しい『女性だけの部隊』です。チームとしても、プロジェクトに参加した個人としても、残されたメンバーとしても……それぞれが結果を残し続けていれば、再編成の掛け合いはそう難しくはないはずです」
「チームとしての、結果……」
「ええ。私たちのような『戦闘補佐隊』に頼らない、明光隊だけの本当の力です。もし必要なら、私と関の練習時間を別に割いても構いません。……チームとしてどういう未来に進みたいのか、もう一度正規メンバーの皆さんで話し合ってみてはどうですか?」
私の言葉を受け、二人は顔を見合わせ、深く頷いた。どうやら、出すべき答えは決まったようだ。
「……ありがとう、小早」
「いいえ、これも戦闘補佐隊の大切なお仕事ですから。……じゃあ、私はちょっと体を動かしてから寝ますね。おやすみなさい」
静かに椅子を引き、二人に背を向けてキッチンを後にする。
深夜の冷えた廊下に踏み出しながら、私は固く結ばれた彼女たちの絆と、これから訪れる大きな変化の予感に、静かに思いを馳せていた。




