勧誘
「明光隊、今回は七体撃撃か。見事な戦果だな」
戦闘を終え、上官の前に呼び出されたのは私、関、相原先輩、そして鴨居先輩の四人だった。
厳しい面持ちで並ぶ私たちに対し、上官は満足げに頷き、相原先輩が隊を代表して「ありがとうございます」と抜かりなく答えている。
「どうだ? 戦闘補佐隊(王子、関)を入れてみて、少しは立ち回りや陣形の組み方などの参考になったか?」
「はい、非常に勉強になっております」
相原先輩の卒のない受け答えを聞きながら無言で立っていると、上官の視線がふっと私へと向けられた。
「ところで王子中尉、広島本部は久しぶりじゃないか?」
「はい。数ヶ月前、出張の折に二泊ほどお世話になりました」
「あの時、君の面倒を見てくれた竹原君だがね、今回の作戦でも実に良い動きをしていたよ。それと……うちの司令部にいる梶本とも、立川の同期だと聞いたが」
「はい。士官学校時代の同期です」
「そうか。梶本の奴、君のことを『自分なんかより遥かに頭の切れる司令官だ』とべた褒めしていてね。どうだね、司令部業務に興味はないかい?」
——司令部からの直接的なヘッドハンティング。
あまりにも突然で、露骨な引き抜きだった。立ち位置や実績を評価してもらえるのは有難いが、今の私にはまだ受ける気はない。
「お気遣い感謝いたします。ですが、戦闘補佐隊でさらに実戦経験を積むまでは、次のキャリアに移ることは考えておりません」
角が立たないよう静かに辞退すると、上官は惜しむように苦笑いを浮かべた。
「そうか、残念だな。立川出身で首席と次席となれば、どの基地だって喉から手が出るほど欲しい人材だからな。二人とも戦闘補佐隊のまま現場で揉ませておくのは、いささか勿体ない気もするが」
ハハハ、と場を和ませるように笑って誤魔化していると、上官は関の肩をポンポンと親しげに叩いた。
「まあいい。いつか現場を退いて『安住の地』が欲しくなったら、いつでも来るといい。広島本部は住み心地が良いぞ」
「……機会がありましたら、是非」
不器用に固まっている関の代わりに、私がすかさず言葉を挟んで一礼した。
安住の地——。
その言葉が胸の奥にどこか虚しく響いたけれど、隣に立つ関の確かな気配を感じながら、私は静かに上官の前を辞した。




