共同戦線
関や立川からの精鋭たちが怒涛の連撃を叩き込んでいるというのに、目の前の怪物は怯むどころか、さらに攻撃の苛烈さを増していった。
関とともに全神力で旋回し、不気味に蠢く怪物の真上へと躍り出る。
上空から観察して、ようやくその異常な身体構造の正体に思い至った。
「……やっぱり。硬いだけなら、あんなに滑らかに動けるはずがない。硬質の殻の“隙間”を開けることで、巨体を折り曲げられるようにしてる……! でも、通常の神力弾じゃ、あの僅かな隙間へ正確に滑り込ませるのは不可能……」
「小早、お前なら撃てるだろ」
隣を並走する関が、迷いのない声で言ってくる。
「……ダメ。私のあの技(弾)は、神力消費を極限まで抑えるためのもので、重厚な装甲を穿つ攻撃用じゃないの。あの隙間からじゃ、十分な勢いをつけられない……。だったら……あの中身を覆っている殻そのものを、一気に剥がせばいいんだ……!」
「小早、詳しく教えろ!」
「教官! あの殻、たぶん代謝によって生み出されている“皮膚”です! さっきからいくら攻撃して傷つけても、下から新しい皮がどんどん再生して追いついていたんです。だから……あの皮を一気に剥がして浮かせれば、再生が間に合わない!」
「剥ぐ……だと!?」
「はい! 私の微小弾で皮の隙間を押し広げ、強制的に浮かせます! 浮いた瞬間に三人で集中放火を叩き込めば、絶対に装甲を剥がせます……! ただ、背中に降り立つ隙を作るには、立川のみんなに今と同じ強度の攻撃を前面で続けてもらう必要があって……それに、背中を叩くには関と私の神力だけじゃ足りません。どなたか、私達と一緒に——」
「私が行きます!」
雨を突いて前に出たのは、相原先輩だった。
「相原先輩……! 中山教官、相原先輩をお借りして、三人で仕掛けます! 皮を剥ぎ取った後は、休みなく叩き続ければ必ず内部のコア(弱点)が露出するはずです!」
「分かった、小早……お前に任せた! こっちは全身全霊で正面の意識を引きつける!」
「了解しました! 教官、囮をお願いします……っ!」
中山教官たちの命がけの牽制の隙を突き、私たちは巨獣のぬめりけのある背上へと降り立った。
ゴツゴツとした巨大な外殻の一片に手をかけ、息を整える。両手のひらの上に、極小の神力弾を無数に凝縮させていく。
「皮が少しでも浮いたら、二人ともそこへ全力で集中放火をお願いします……! いきますっ!」
直後、夏の夜に舞う蛍のような、儚くも美しい無数の小さな光が私たちの周囲に生まれ——次の瞬間、猛烈な勢いで外殻の隙間へと滑り込んで弾けた。
ミシッ……と、不気味な剥離音が響く。
外殻が、確かに浮いた……!
「お願いしますっっ——!!」
私、関、相原先輩の三人の神力が一点に収束し、激しい閃光となって剥き出しの肉塊へ突き刺さる。再生速度を遥かに上回る破壊が、外殻の内側を削り取っていく。
「あった……!」
「弱点はあそこだっ!」
「くらえぇぇぇぁぁっっ——!!!!」
渾身の威力を乗せた一撃が怪物の核心を撃ち抜き、ドォォォォンと天空を揺るがす大爆発が巻き起こった。
引き裂かれた暗雲の隙間から、砕け散る神力の光が空へと放たれていく。雨粒に反射し、まるで夜空に広がる美しい星々の輝きのように世界を照らしていた。
……綺麗……
安堵した瞬間、全身の糸がぷつりと切れた。
視界が急激に暗転し、浮力(神力)を失った身体が重力に従ってまっさかさまに落ちていく。
あ……神力が、もう……一滴も……。
感覚の失われていく世界の中で、強い腕が落ちていく私の身体をしっかりと抱きとめてくれた。
「小早、お疲れ様。……もういいよ。あとは俺が……お前を連れて帰る」
耳元で聞こえた関の温かい声に包まれながら、私は深い、深い闇の中へと意識を委ねていった。




