↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
113/269

成長し変わっていくもの

無事に退院し、空を飛べるまでに体力を戻したものの、周囲からは相変わらず「無理をするな」と言われ続けていた。

特に前線へ残った関からは、過保護なほどにしつこく釘を刺される。過剰な気遣いが、かえって自分の無力さを突きつけられているようで、少しだけ息苦しかった。

その日の夜、火照った体を冷ますために自販機でジュースを買い、夜風に当たりながら佇んでいた。

すると、足音とともに南野がやってきた。

他愛もない雑談から始まり、話は自ずと先日の壮絶な戦闘のことへと移っていく。

同じ戦場にいても、視点が違えば見えている世界が違う。南野の語る「あの時の惨状」は、どこか客観的で、自分の薄れかけた記憶を補完してくれるような参考になる話ばかりだった。

「……昔みたいにさ、かえでって呼ばれたの、すごく嬉しかったよ」

ふと、南野が少し照れたように呟いた。

「……え、私、言ったっけ?」

「あはは、本人が覚えてないならいいけど……なんだか、昔に戻った気がしたんだ」

「そっか。……無意識だったわ、多分」

言われてみて、胸の奥が少しちくりと痛む。

中学二年の頃——あの頃の南野は、いつも私に対して当たり散らしていた。気が強くて不機嫌そうで、言葉もキツかった。

部活を辞めて以来、関わりも途絶えていたから、自分でも無意識のうちに昔の呼び名が出ていたことに驚きつつ、少しだけショックを受けていた。

「南野は、どう思った? あの戦闘」

「……なんか、自分の力の弱さを痛感したよ。……本当、小早は強いね」

「神力の器がでかいだけだし、士官学校で散々訓練してきたからね」

「中山中佐が言ってたよ。普通の人なら、小早はあと五回くらい死んでるって」

「ははっ、無茶するところは桜木教官に似ちゃったから。」と笑いながら返すと

「……私も、士官学校に行きたかったな」

自嘲気味に呟く南野の横顔を見つめる。

「こればっかりは生まれつきの神力量で決まるし、しゃーないよ。……でもね、私はずっと、南野が羨ましかったよ」

「……なんで?」

「器用になんでもできて、強くて……先輩たちにも頼られて、必要とされてたからさ」

「そっか……」

南野は少し驚いたように目を見開き、それから視線を落とした。

中学時代、なんでも器用にこなす南野は私の憧れだった。逆に南野からすれば、不器用で泥臭く努力する私の存在が、鬱陶しくて鼻についたのだろう。お互いに幼くて、すれ違って、部活を辞めたことで接点すらなくなったあの日々。

だが、あの頃のトゲトゲしかった南野は、もうどこにもいなかった。

「ねぇ、小早の同期の子……関くんだっけ?」

「あー、関ね。……ちなみに、関は一応年上だよ」

「えっ、浪人? それとも留年?」

「ううん、私が飛び級したの」

「えぇっ!?」

「言ったことなかったっけ?」

「言ってないよー! 本当にすごいな……!」

目を丸くして驚く南野の姿に、思わず口元が緩む。

あの日、あの地獄のような立川で安宅くんを失い、大切なものをすべて奪われたと思っていた。

けれど今、こうして生きて、昔確執のあった同級生と「普通の女の子」として他愛もない会話ができている。

その小さな奇跡が、傷だらけの私の心に、少しだけ温かく染み込んでいった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。