桜木班出身、関悠斗
「……冷静になれないお前を行かせるわけにはいかない」
冷たく突き放すように告げた俺の言葉にも、関の瞳の炎は一向に陰りを見せなかった。
これは、想像を絶する死地だ。一歩間違えれば、小早を救出するどころか関まで体内に呑み込まれ、二度と戻れなくなる可能性がある。
立川のあの日、俺の目の前で散っていった数多くの教え子たちの姿が脳裏をよぎる。
もう……お前たちを死なせたくないんだよ。
胸の奥から湧き上がるその切実な叫びは、隣に立つ中山も同じだったはずだ。
行くなら、一度あの地獄を経験している俺が行くべきだ。
「俺が行く。一度呑み込まれた経験のある俺の方が、まだ勝算がある」
俺がそう言って一歩前へ踏み出そうとした、その時だった。
「……俺を信頼できないんですか? 桜木班出身の、この俺を」
関が前を見つめたまま、低く、力強い声で言い放った。
振り返ると、あいつは口元に微かな笑みを浮かべていた。神力の調整に心身ともに苦しみ、ずっと暗闇の中にいたここ最近では、一度も見ることのなかった力強い表情。
あぁ……そうだ。関悠斗は、本来こういう奴だった。
立川で俺の背中を追いかけ、どんな過酷な訓練にも食らいついてきた、熱く泥臭い男だった。あいつの「らしさ」が、小早を救うという固い覚悟とともに、今まさに戻ってきたのだ。
俺は腹を括り、覚悟を決めて関の肩を強く叩いた。
「——桜木班、関中尉……行ってこいっ!!」
「はいっ!!」
「桜木っ!?」
狼狽する中山の声が飛んでくる。俺はそっちを振り返りもせず、不敵に笑ってみせた。
「中山、安心しろ! お前の大切な隊員を死なせたりはさせねぇよ! なんせ、俺が鍛え上げた精鋭・桜木班の出身者だぞ? 下手こくわけがねぇだろ!!」
咆哮とともに急加速した関の身体が、化け物の暗黒の巨大な顎へと吸い込まれていく。
頼んだぞ、関……! 小早を連れて、必ず生きて戻ってこい……!
俺は全神力を練り上げ、関の後ろ姿を守るように、敵への攻撃を強めた。




