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飲み込まれる

神力が少しばかり回復したところで、使い物になる兵士などほとんどいなかった。

こんな状況だ。無理もない。気持ちが切れた者を連れていくわけにもいかない。

そんな絶望的な状況の中、未だ体の重い明光隊の三人(相原、片倉、南野)と、実戦復帰戦となる関が志願して立ち上がった。俺は彼らを連れ、前線へと飛び立った。

「関、久しぶりの実戦だが……いけるか?」

「大丈夫です」

短く答える関の横顔には、固い決意が宿っていた。

だが、小早や桜木たちが戦う前線へ向かう道中、打ち漏らされた敵の群れに阻まれ、思うように前進できない。焦る気持ちを抑え込み、1体ずつ確実に撃破しながら強行突破を試みる。

ようやく前線の空域へ辿り着いた、その時だった。

目の前で、たった一人で狂気じみた凄絶な立ち回りを繰り広げている異様な影が目に入った。

限界を超えた神力を撒き散らし、命を削りながら死闘を演じるその姿に一瞬気圧される。

……すげぇな、どこの隊の猛者だ……?

思考が一瞬停止し、次の瞬間、冷や汗が背中を駆け抜けた。

……待て……小早……!?

「小早っ——!!」

隣で関が裂けんばかりの声で叫ぶ。だが、乱戦の激しい爆音に掻き消され、遥か遠くにいる小早には届かない。

「中山、あそこにいるヤバい奴……王子か!?」

すぐ近くで群れを捌いていた桜木が、顔を強張らせて叫んできた。

「間違いなく小早だ……!」

「なら早く行け!! 止めろ!!」

桜木にその場の抑えを頼み、俺と関は限界まで速度を上げて小早の元へ急行した。

あと少し、あと数十メートルのところまで肉薄した——その瞬間だった。

「——っ!?」

ヤツの漆黒の触手が死角から伸び、速度の落ちていた小早の足を容赦なく捕らえた。

抵抗する間もなく、小早の小さな身体が巨大な亀裂のような口腔へと引きずり込まれ、一瞬で飲み込まれていく。

っ——!!!!

息が止まった。

数々の地獄をくぐり抜け、教官として幾多の死を見てきたこの俺でさえ、血の気が完全に引いた。

引き連れてきた明光隊の三人は、眼前で起きたあまりに凄惨な光景にピタリと足を止め、呆然と空中に立ち尽くしている。

「ここは前線だ! 足を止めるな、しっかりしろっ!!」

襲いかかる弾幕から三人をかばいながら、俺は喉を潰す勢いで叫んだ。

……だが、待て。三人……!?

「関が……いない……!?」

ハッと視線を走らせると、関がたった一人で、小早を飲み込んだ化け物へ向かって直線的に突進していた。

その瞳は怒りと絶望で赤く染まり、全神力を刃に束ねている。

「小早を……小早を返せぇぇぇぇっっ——!!!!」

「関っ!! バカ野郎、戻れっ!!」

俺の制止の声など、今のあいつの耳には届かない。

1人で勝てる相手ではない。何より、あいつは長期間のブランクを経て、今日が復帰後初めての実戦なのだ。自分の状態を自覚しろ、あのバカが……!

後ろの民兵三人は、あまりの恐怖に足がすくんで動くことすらできない。

「くっそ……っ!!」

小早! 関!

意識の底で、かつて目の前でヤツに吸い込まれていった桜木の惨劇が、鮮明な映像となって重なる。

あの日の悪夢が、また繰り返されようとしている。

このままだと……二人とも、あいつらに喰われて死ぬ——!!

絶望的な焦燥感に駆られながら、俺は二人の教え子を救うため、神力の翼を限界まで強めて前線へと突っ込んだ。


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