四、同類はいつの間にか集まるもの
「……だーー!もう、やってらんねぇ。俺ぁ睨み合いも読み合いもできねぇんだよ!俺は、本当にただの医者として連れてこられた。視えることだって仲間の誰も知らないし、ただ偶に直感がいいやつとしか思われてねぇのは確信を持って言える。俺が命よりも大事にしている医術書に誓ってもいい、いや、誓う!」
「へぁ?」
揺れていた瞳がぴたりとこちらを見据え、何だかよく分からないまま何かに誓われた。
昔の出来事と連鎖して思い返されそうになっていた感情も、ネグの勢いでどこかへ飛んでいった気がする。
「お前こそ、メート国には誰かに連れてこられたんじゃないのか?大丈夫なのか?」
「それは、大丈夫です。理解した上でここに居ますから」
完全に勢いが削がれ、どこか柔らかい空気が漂う。
「俺はメートの外に医者として住んで長い。だが、お前みたいな子どもは」
「もうそろそろ一年ほどですが……もしかして、カロズのおっちゃんの知り合いさんですか?」
「おま、あいつを知ってるのか?なら、ちゃんとメートの外のやつで間違いないのか……?」
カロズの知り合いの医者、子どもの守り、偏屈なおっさん。
次々に覚えのある言葉が脳内に浮かび、ピシャリ、と枝葉で叩かれたかのような衝撃が記憶を走った。
「ーー!」
「なん、なんだ?」
「信仰嫌いの元治癒魔法士!」
「その呼び名で呼ぶんじゃねぇ!……は、それを知ってるってことは外の住民で間違いねぇ、のか。そうか……」
ひらめきで思わず差しかけた指をもう片方の手で押さえつつ、思い出せた嬉しさに飛び跳ねる。
しかしネグはというと、思わぬ確認方法だったからか少しばかり唖然としていた。
「ごめんなさい、失礼を。私は、みんなからはネスと呼ばれてます」
「!死体処理の、頭のおかしなまじない使いってお前のことか!!」
「わ、なかなかに酷い呼び名……まぁあながち間違いではない、ですね……?」
医者の勉強をできる環境にはいたものの、治癒魔法の適性があったせいで家族と離され、隔離されて情報が届かない間に家族に不幸があった。
若くして奥さんと子どもを失い、当時治癒魔法を強制的に教えるために監禁していた祈りの家を恨み、飛び出して医者として生きているのだと人伝に聞いていた、その人。
「瞳持ちとは驚きですが、まぁ祈りの家の関係者にバレる心配が減ってよかったです」
「俺だってあんな噂の主人がこんな浄化持ちだとは思わなかったぞ……ま、そう考えりゃ納得なのか?あぁ、安心しろ。誰にも言わねぇ」
お互い似たような事情のせいで、言葉少なく?して理解を交わした。
ふっと息をついて落ち着き、現状の整理をしようとしたところで気になることが一つ。
「瞳持ちであるとしての捕獲はされなかったんですか?」
「お前ほどの素質持ちでないと視ても分からねぇよ」
「はい?」
ため息を吐きながら言われた言葉に思わず首を傾げると、どうやら素質の感じ取り方にも度合いがあるらしいと説明された。
どうやらネグは、上級に分類される素質持ちはなんとなく分かる程度だという。
……素質の種類じゃなく強さに差があることを初めて知った。
「なら、私は上級なんですか?」
「それ以上だろ、一瞬バケモノかと思ったぞ。何回かだけ上級の素質持ちを見たことはあるが、お前ほどのやつは居ねぇ。この国にいた上級でも十分バケモノだと感じたが、それより上がいるとは……よくバレなかったな?」
「それは、医療系の人がいる方へは近寄らなかったですし、祈りの家とも距離を置いていました。それに、秘密のまじないもあるので」
ちゃんと隠してたんだよ、ということを示そうとすると、これ以上の面倒は嫌だというふうに手を振られた。
それにしても、メートには上級の素質持ちがいるらしいと聞いて、何か記憶に引っ掛かるような気がしたのだけど。
首を傾けて手を顎に当てて、姿勢から考える事に集中してみるも、気のせいだったのかいくら記憶を辿っても見つけられずに分からなくなってしまったのだった。
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