↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷子の呪い使い  作者: むぐらのこ
本編 まじない少女と拉致騒動
8/23

三、お互いの秘密

少し長めです。


「おぁようごじゃま……す」

「おはようさん。これ食え、今朝もらった」


 目が覚め、いつの間に渡されていたらしい食料袋が増えていた。

 寝落ちてしばらく経った時、無言で上から落とされてきたらしいと言われ、人の気配に起きられなかったことに驚いた。


「ぐっすり……」

「魔法の影響だ。そろそろ治った頃だと思うが、今日一日までは余裕を持って何もしないでおけ」

「わかりました」


 もぐもぐと食事をしていると、何やら考え込んでいる様子のネグ。

 ふと顔を上げたと思ったらまたすぐに伏せ、ボソリと呟くように言った。


「……荷物を届けに来たやつが何やら慌てた様子だった。何かあるかもしれん」


 その言葉に上へ注意を向けてみるも、人の気配は感じない。

 まじないを使おうか、と魔力を練りかけて他ところで、強い視線を感じて我に返った。


「どうしました?」


 視線の方へ目をを向ければ、凝視と言っても良いくらいに見つめてくるネグ。

 私は何もしてな……く、なくない?

 危なかった、早速まじないを使うなと言われたことを忘れかけていたのがバレたか、と冷や汗じわじわと背筋を伝う。


「……ネグさん?」


 琥珀色にも見える茶色の瞳は、何かを見透かしているような気がして心臓に悪い。

 どうやら怒っているわけではなさそうだけど、と恐る恐る瞳を覗き返すと、心なしか目の奥がじんわりと光ってい見えた気がした。


「あの、」

「お前、ずいぶん強引に攫われてくるから何かあると思ったが、まさか浄化の素質持ちか」

「は……?」


 思わぬ言葉に動揺して、思わず困惑の気持ちがそのまま声に出る。

 いや、いやいや、この人は単に素質が見えているだけ、だよ、たぶん。

 え、あれ??


「お前、格好からして外壁の外で暮らしてるよな?何で祈りの家に行ってないんだ。まさか抜け出してきたのか?」

「外の住民、です、よ」

「親はどうした、知り合いは?ソレで知られてないなんてことはないだろう。それともまさか国外から連れて?」


 今までの気怠げで特徴的な喋りがなくなり、別人かと思うほど流暢に話すネグ。

 どこか仄暗い感情が揺れる様子に、何故だかその時ばかりは迷っている子どものように見えた。



 素質は、生まれ持った才能の欠片とも呼べるもの。

 その多くが魔法に劣る一方で、魔法が霞むほどの力を持つ素質も存在する。


 神の司るものの名前をつけられるほど有用で特異な力を持っているからなのか、有用で特異な力だからこそ神の司るものの名で表されるようになったのかは知らない。

 私が知っているのは、それが時に神をも勝るということだけ。


 ぐるぐると意味もなく頭の中を漂っていた言葉が、底の見えない穴に吸い込まれていくような気がした。


「祈りの家から誘拐された、なんてことは」

「ありません。私はただの外の住民で、……今は一人の子どもです」


 特に『浄化』は色々な理由から世界中の信仰者が羨み、その存在を求めて止まない素質と言われている。

 しかし、浄化の素質を持つものが生まれるのには遺伝も規則性もないし、本人でさえ分かりにくいため、自己申告制とはいかない。


 なら、どうやって知るのか、見つけ出すのか。


「ありえない」


 まるで、私がここに居てはいけないと言われているような気がした。


「そういうネグさんは、やっぱり瞳持ちなんですね」

「っ……あぁ、そうだ」


 ネグのように何かしらの感覚で『わかる』人は、少なくはないけれど自分で理解できている人は少ない。

 違うものが見えている感じている、と判明するほとんどの人が視てわかることから『瞳持ち』だと言われることが多いけれど、彼らにとっては好ましくない呼び名らしい。


「ネグさんこそ祈りの家から逃げ、」

「違う!」


 わざと言われたくないだろう言葉を返せば、想定通りの言葉が返ってくる。

 そうやって怒るけれど、怖い顔をする前に私も同じことをされたのだと気づいて欲しい。


「でしょうね。私だってあそことは何の関わりもありませんし、関わりたくもない」


 少しコツは要るらしいけれど、何かしらの素質持ちなら他の素質持ちも何となくわかるし、瞳持ちにだって視られれば分かる。

 きっと根っこが同類だからかな、と個人的に思っているけど正解は誰にも分からない。


 ただ素質持ちも、素質が『わかる』人も、祈りの家の関係者に見つかったら問答無用で連れて行かれる。

 時には人身売買や誘拐、非合法な手を使ってまで得ようとされているのも、そういう能力がある人にとっては当たり前で、常識だった。


「なら、お前は……」



 瞳持ちの人々が、なぜ同じく珍しいはずの素質持ちとは違って酷い扱いを受けるのか。

 彼らにとっては日常風景と変わらないそれを、特別な力など微塵もない一般人な彼らを。


 見つけられる側も、見つける側も、終わらない負の連鎖を作り出した人間が。

 ネグのその揺れる瞳の奥に深い苦労が視えた気がして、届かない誰かに怒りが湧いた。



子どもっぽくないネス。

ちょっと説明回でした。


お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。