3、子ども仲間
「いい人だけど悪い人……!」
敵意とも殺気とも違うけれど、あまり良い種類の視線では無い。
いくらカロズから「手は出されない」と言われていても、物理的距離を置きたい。
ネスは、そう心の中で叫びながら逃走路へ駆け込んだ。
仲間の子ども数人だけで協力して作った逃走路は、瓦礫や建物の隙間、地面を掘った穴や壊れた水路などいくつもの障害物を織り交ぜて作られている。
大人では通れない、通りずらい道幅が多く、子どもだからこそ通れる隙間や動きやすい幅で作られた場所が多い。
当然ネズミや小動物も住みつくけれど、別に食べ物をもらえることがわかっている彼らは子どもを襲わないどころか、住処を荒らす大人には襲いかかる。
……というより、いつもの食料がほとんど『大人』だからこそ子どもを食べようとしないのだと思う。
全ての道は、最終的にあのカロズの店へと繋がっている。
カロズのあの顔と図体に見合う強さは、その全てが子どもの庇護へと向けられているのは周知の事実で、何かあった時はあそこに逃げ込めば確実に助けてくれる。
子どもを持つ親も、一人な子どもも、全員が一番最初に教えられることだ。
*
逃走路からでたネスは、気分転換も兼ねて遠くのゴミ捨て場へ向かおうと歩みを進めた。
食べられるものを売っている屋台を見ながら、やっぱりお駄賃を待てばよかったかと頭をよぎるも、あの怪しい人から距離を取るのが優先か、と頭を振った、そんな時だった。
「ネス」
「ジャット?」
すれ違いざまに声をかけてきたのは、ネスの仲間のジャット。
今の子ども達のリーダーを務めている人物でもあり、今朝ネスに「拾い物」を預けてきたうちの一人でもある。
「ごめん、いつもの人来て逃げてきたからお金ないけど……どうしたの?何かあった?」
「!……いや、問題なくなった」
ついてくるように隣へきたジャットは緊張した面持ちを崩し、安心したような顔で話を続けた。
「久々に危ない予感がしたんだ。でも何が危ないか分からなくて、とりあえず人命に関わりそうな場所を周ってきたけど違うみたいで」
仲間の何人かは優れた直感を持っていて、ジャットはその中でも危険に対する予感を感じるという。
「ネスから話を聞いた途端にモヤが無くなった」
「じゃあ、あの怪しい男の人のことだったんだ。よかった、最近はいろいろ危ないし」
「うん。あ、お金は急ぎじゃないからまた今度」
「わかった」
走り去るジャットを見送り、歩みを進めた。
遠目で見えた何人かの仲間たちに怪しい人が来ていることを教えつつ、仕事をしている仲間たちのことを思い出していると、ふと祈りの家が見えた。




