五、いい忘れてたこと
「レオが泣いている理由は」
「知らなし興味もないねー。それより、キミの話を先にしてー?オレもいつ呼び戻しがくるか分からないし、前に見にきた時は寝てたからさー」
「あ」
すっかり忘れていたことに気がついて声が漏れた。
そんな様子に顔を顰めたルーエンだったけれど、すぐまた脱力して疲れた顔をする。
「もーさ、オレが視えるってことはキミにバレてるんでしょー?どこで気付いたかだけ教えてもらっていー?子どもの頃ならまだしも、この年になってバレたことなんて無いから気をつけないと、ってこっちはずっと気を張ってたんだけどー」
遠い目をするルーエンの様子に、ただでさえも忙しいのに余計な気疲れをさせてしまったようで申し訳なくなる。
けど、不意打ちで余計なことを聞かれた時の私も怖かったし、お互い様だと内心で呟いた。
「目の動きと、感です。似た人を知っているので気付いただけで、他の人に気づかれることはまずないと思います。随分と細かく調整ができるんですね」
「……え、そこまでわかるの。なんで?てか似た人を知ってるって、どこ?誰??」
「ひぇっ」
目がぐわりと見開かれ、反射的に立ち上がりかけた動きをレオに阻害されて倒れかける。
と、近づいてきていたルーエンもその動きに流されたのか、器用に身を捻って反対側に倒れていった。
「ふぇぇ、はなれちゃやだぁー」
「れ、レオ。ごめんなさい、ルーエンさんは大丈夫ですか?」
「ぐぁ」
とうとうレオの泣き声が大きくなり、倒れていったルーエンは倒れどころが悪かったのか身を起こさない。
どうしようかとあたふたしているところで、扉が強く叩かれた。
「うるさくしてごめんなさい!」
「……大丈夫か?」
「大丈夫です」
前科というのはおかしいけれど、最近はずっと倒れっぱなしなせいか、いつの間にか店に来ていたネグが安否確認に上がって来たようだった。
返事の大声でレオの泣き声もぴたりと止まり、本人はきょとんとしてこちらを見ている。
混沌とした状況で悪いけど、ひとまず落ち着いたようでよかったと胸を撫で下ろした。
遠ざかっていく足音を聞きながら、倒れているルーエンへと声をかける。
「私は素質持ちですし、似たような能力を持っているので分かってしまうんです。もともとは瞳持ちの能力も素質持ちと似たようなものですからね。……先に言えばよかったですか、ごめんなさい」
壁の中は結界のせいで一応メラクトの領域だったから、自ら言うような行為はあまり良くないと思って言えなかった。
そんな言い訳を思い浮かべつつ、痛めたらしい場所へ治癒のまじないをかけながら、未だ混乱に目が泳ぐルーエンに謝った。
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