四、止められない涙
「2階借りるよー」
「おう」
落ち着いてキョロキョロし始めたレオにはまたフードを被せているけれど、そんな事は気にしないのか何も言わずに二階へ通すカロズ。
入った先は私が寝起きした部屋で、一応畳んでおいた布が端に寄せられたまま変わりない。
警戒なんていくらしても足りない気がしつつ、前と同じく椅子をドアに立てかけた。
綺麗にしてある部屋の一角になんとかレオを抱えたまま床に座ると、ルーエンも暑そうなマントを脱いで腰を下ろしていた。
「はー、疲れたー」
「どうしたんですか」
泣き出したまま瞳が溶けそうなほど涙を流すレオは、どう見ても話せる様子ではない。
マントを脱いだルーエンの肩も、何やら濡れた跡がついていた。
「今朝からずーっと泣いてー。オレにだけ『ネスお姉ちゃんに会いたい』って言いまくるからナイショで抜け出してきたんだー」
結界もなかったし抜け出すのは簡単だったけどー、と続くぼやきに目を見開く。
すっかり落ち着きを見せて以来微動だにしない自分の警鐘に、いつまで寝ているのかと内心で叩き起こしつつ、閉めた窓を開けて外を見た。
「……本当に、ない」
「そー、唐突にねー。国の奴らはほとんど気付いてないしー、気付きそうな魔導師たちは既に他の国に向かっているからねー。余計な口を出して引き止められるのも面倒なんだろうなーって。そこの子どもがオレの所へ来たことも誰も気付いてないと思うよー?」
そこそこ隠れはしたけれど、後からついてくる人は一人もいなかったどころか、門番にすら怪しまれもしなかったらしい。
何の感慨も無いかのように完全に気を抜いているルーエンを見て、なぜか憤りが湧いてきて内心で首を傾げた。
今のどこに、怒る要素があるのかわからない。
巻き込まれているとは言いつつ、あらかじめ決まっていたかのように崩れ行く国に、今更何かできることなんてないのに。
「……そういえば、忙しいのに大丈夫なのですか?」
「いーのいーの。オレは最初からこの国に派遣されて居るから問題なーし」
何かあっても帰る場所がある、というのがルーエンの自由人っぷりに拍車をかけていたようだと納得した。
カロズや、ネグと古くからの知り合いだった様子もその関係なんだと思う。
「……レオとは知り合いではないのですか?」
「んー、オレは噂を聞いてたけど、こっちからは全くの他人……のはずなんだけどねー。なんでか助けを求められて引っ付かれたんだよー。泣き付かれてちゃ仕事にならないしー、ちょうどこっちに来ようと思ってたからついでに連れてきたって感じでー」
鬱陶しい保護者もいなくなったし、と小さく呟いたルーエンは未だ泣き続けるレオを見てため息を吐いた。
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