十八、思考と我慢の限界
少し短いです。
勝手なことをするな、と怒鳴られた。
分かるけど、分かるけど!
こっちにだって事情はあるに決まっているんだから、こちらの話を聞いてからにしてほしいと心底思う。
本当に、本当に!!
「こっちにだって事情はあるんです!レオの前で人が死んだら何があるか分からなかったし、ネグさんが外の子どもの面倒を見ている一人だってことも知って。本当ならすぐに治せる怪我を私の都合で手が出せなくて、それで死者が出るかも知れなかったんです。さらにいえば、死にかけているのが知り合いの有能な治癒士なら尚更、放っておけるわけないでしょう?!」
近づいたままのネグを、腕を振り払って威嚇するように見上げた。
じわりと歪んだ視界も気にせず、思い浮かんだ言葉をひたすらに吐き出す。
「私の怪我が治らないのはおまじないが治癒魔法に優っているからだし、そもそもレオが私をお気に入りにしたのがもとで危害を加えようとしてきた人に神罰が落ちて、その人が目の前にいたから影響が自分にまで降りかかって。他所の魔力を無理矢理詰め込まれたせいで体が痛いですなんて、誰が言って分かるんですか、言って誰が解決してくれるっていいうんですか?!」
私をお気に入りにしたレオは微塵も悪くない。
悪いとしたら、私に危害を加えようとしてきた人。
正直に言ってしまうのなら、自分の神子候補のお気に入りの人間が害意を向けられただけなのに『かみなり』を落とすヒトが一番おかしい。
さらに言えば、あの屋敷にいる間ずっとこちらに手を伸ばそうと干渉されていたのだって、痛みが少しも減らなかった原因だ。
ずっと痛かったし、一応そんなおかしいヒトの領域内なこともあって、まじないも上手に使えなくて怪我も治せなかった。
こんなことになるならレオの前でもいいから治しておくんだったと、余計なことで後悔しそうになって慌てて頭を振る。
「話せることと話したいことと、話して分かることを順番に説明するのにいちいち突っ込まれたら一向に話も終わらないですし、もう疲れててよく分からないのでこれ以上聞くならせめて寝て起きてご飯食べた後にしてください!」
言い切った、言いたいこと全部言った。
まだまだ説明しなきゃいけないことはあるのに、それ以上に眠気が思考を侵食してきて言葉がモワモワと霧に覆われていく。
大声を出したせいで息切れしたまま、くらりと頭が揺れて。
足を広げて体を支えようとした一歩が床を踏み損ねて、そのまま体が傾いていく。
また、倒れる……。
床にぶつかるより前、誰かに抱き止められる感覚が脳に伝わるよりも前に、ドロリとした疲労と眠気が体を覆って深い眠りへと落ちていった。
お読みいただきありがとうございました。
拉致騒動としては終わりなので、次は別の章になります。
よく眠るのにもちゃんと理由があります。(登場するかは分からないけれど)




