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迷子の呪い使い  作者: むぐらのこ
本編 まじない少女と拉致騒動
13/28

八、身勝手な大人たち


 あまりの理解し難い状況に、怖がるレオを他所に困惑を隠せない。

 腕は痛いし、お腹も未だ殴られた時の衝撃が残っているような気がして若干の気持ち悪さがある。


 嘘を言うのは嫌なのに、痛いかという声に素直に答えてしまえば、レオも痛みを感じてしまうだろうからダメだ。

 現に問題はない、ちゃんと治るから、と答えているにも関わらず心配で仕方がないという顔を向けられて胸が痛む。

 ……レオが居なかったら治せるかもしれないなんて絶対に言えないよね。



 随分と長いこと問答を繰り返し、不意に眠ったレオに布団をかける。

 細心の周囲を払いながらベットから降り……ようとして、握られていた手に気がついて諦めた。


 代わりにクッションの山へを身を沈め、レオの穏やかな呼吸に眠気を誘われはじめた時だった。


 ガチャリと唐突にノックも無く扉が開く。

 緊張に身を固める中、今更ながらベットを囲うヴェールの存在に気がついてわずかに息を吐いた。


 しかし、そのヴェールの所為で体の形がうっすらと見える程度。

 絨毯で足音も小さく、細身の男だということしかわからない。


「……世話係か?……あやつめ、何を勝手に」


 入るなり、ベットを覆う薄いヴェール越しにこちらを見つけたのか、困惑したように足を止めた男。

 こちらに向けられた強い視線に、ヴェール越しでも体に何かが刺さるような錯覚を覚える。


 息を殺しながら警戒していると、見えた人影は足音と共に遠ざかり、ガチャ、と再び扉が開く音がした。



 また人が入ってきたらしく、今度はもぎゅもぎゅと絨毯が踏みしめられる音が聞こえてくる。


 恰幅がいいのか荷物でもあるのかは分からないけれど、重さのせいで足音が大きい。

 そんな人間は、先ほどの男とは違って数歩進んだところで歩みが止まった。


 遠いからかヴェール越しでは体の線すら見えない。

 緊張で微動だに出来ずにいると、誰かが荒々しく息を吸う音が聞こえた。


「貴様。なぜここにいる!」

「レオルド様が体調不良で寝込まれていると聞いて、見舞いがてらお前の失態を見に来たところだ」

「勝手に何を!」

「お前のところの使用人が入っているからとはいえ、ここは私の屋敷だと言うことを忘れたのか?彼の方がいて私がいないわけがないだろう」


 さも当然の事を言っているかのような落ち着いた声色の男は、うるさい男の言葉に被せるように声を放つ。


「私が約束したのは彼の方のお世話のみ。大体、お前が疑われているから私の屋敷を貸してやったと言うのに、ここへ来るまでの時間はどうしていた。国定魔導師が調査に入ったらしいではないか」

「貴様が攫うのに手を貸さないから、わざわざ私が苦心して攫って来たんだ。どこに運ぼうと私の勝手だろう!」


 威圧たっぷりに言う男に、息を切らしながら怒鳴りつけるもう一人の男。

 その声でぼやっと目を開きかけたレオだったが、こちらを見てへにゃりと笑い再び眠りへ戻った。


「その不手際でお前だけが狙われるのならまだいいが、くれぐれも彼の方を取り上げられる事が無いようにしろ」

「ふっ、貴様はせいぜいレオルドに、ぐぁっ」

「……レオルド『様』だ。いいか、次に呼び捨てにしたら貴様の首を切る」

「っ……、私が摂政となった暁には、覚えているんだな!」

「私はレオルド様をお守りすることのみ。お前こそ覚えておくんだな、レオルド様に怪我を負わせでもしたらお前の一族もろともこの手で根絶やしにしてくれる」


 低く凄みのある声には押し潰すような威圧が込められており、離れているはずのベットの周りの空気さえビリビリと震えているかのように感じる。

 それを真正面から浴びた男は余りの威圧に怯えたのか、逃げるような勢いで部屋から出た。


 重たい足音が遠ざかって行き、パタリと扉が閉まった。


お読みいただきありがとうございました。

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