六、現状把握と悪い知らせ
「……問題はねェな。手と顔にあったうっすい傷は治しといた」
「……ありがと」
ちょと暴れながらも、無事に治癒魔法を施されたレオ。
再び私の背後に隠れるところは変わらないけれど、どうやら警戒の度合いは下がったようで顔は出している。
「ネグさん。私も、もう魔法の影響残ってないですか?」
「ンー……残ってねェな」
「ありがとうございます……<ラナ><雨は降ってる?>」
「あァ?」
頭を撫でていた手でそのままそっと耳を塞ぎ、レオに聞こえないようにしてからまじないを行う。
不思議そうな顔で見上げてくるも、物分かりがいいのか単に遊びだと思っているからか、抵抗しないどころかさらに身を寄せてくる。
たぶん『視』えているし『感じて』いるけれど、理解には至っていない。
キョロキョロと不思議そうに視線を動かすレオを見ながら、そっと耳を塞いでいた手を離した。
怪訝な顔をするネグの視線を全身で受けつつ、おまじないのおかげで視えるようになった周辺の状況を説明する。
「とりあえず近くに人はいなさそうですが……魔物避け、はある。でも、結界?」
「あ?」
「もしかして、壁の内側の?いや、でも」
建物より遥か上の方から感じられるのは、いつもの魔物避けの魔法。
……当然のように外だと思っていたけれど、確かに感じる結界の魔法は壁の内側、城を中心に広がっているもので外には無いもの。
「壁の内側だったかァ?やっぱりな」
「やっぱり?」
苦い顔をしながらも、どこか確信があるようにいうネグ。
気遣うようにレオを見てから疲れたように口を開いた。
「そこの子どもを見て分かったンだよ。壁の内側の結界は出入りに制限がある。外の人間を『物』として運び入れるのはできなくねェが、内側の者を勝手に連れ出すことは絶対にできねェ。偉い奴ほどナ」
結界の詳細は一般には不明とされているけれど、出入りに厳しい制限があるというのはよく知られた話。
数年前の壁の工事と外の住民の整理があってからは、壁の下を掘るのも自分から荷物に紛れ込む事もできなくなったと語るネグ。
出入りするには保証人のついた許可証が必要で、さらに言えば『正式な国民』たちは何かしらの魔法によって登録されていて勝手に外に出ることもできないらしい。
「……私たちは完全に『物』として運び込まれたってことですか」
「だろォな。じゃなけりゃ今頃、そいつに掛けられた追跡の魔法が反応して大騒ぎになってるサ」
背に隠れるレオを顎で指しつつ、騒ぎになったら俺が犯人にされるだろうなと呟くネグ。
「でも。もしここから無事で逃げられたとしても、正式な国民ではないので無事では済みませんよね」
思わず呟いた言葉に、ネグと揃って顔を歪めた。
メート国の都を覆う結界はメラクトの加護をもつ国主の魔法らしい。
それなら尚更、レオが勝手に連れ出されたという線は無く、国内であるという確信が持てる。
自立と巡りを司る神の国だと言う割には、まるで鳥籠みたいだと思ってしまうのは仕方がないと言いたい。
メートの壁の内側から追い出されても外に住むのは、魔物避けの魔法の所為。
それがなければ、道を歩いていても魔物に殺されるし、今の周辺国の状況を考えるに他の国にたどり着けたところで、移民というより脱走者扱いで処理される可能性が高い。
そんな事を考えていれば、不意にこちらを見るレオと目が合って慌てて考えを消した。
ネグの話し方のカタカナは完全に不規則です。ネグのやる気がないほど増えます。
お読みいただきありがとうございました。




