↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幕末ヒモ男児 ―7歳年上の女性に飼われた十代の青年が、動乱の時代を駆け抜ける―  作者: 木林進
外伝8 「お光が笑う理由(消えた一橋派の姫)」
PR
95/96

シーン9 お光の本当の名前

夕方。


由太は夕飯を作っていた。


お光は縁側に座っている。


いつもより静かだった。


「お光さん」


「何?」


「今日、元気ないね」


「……そうね」


由太は隣に座った。


「昔のこと、思い出してた?」


「うん」


「そっか」


しばらく沈黙。


お光が口を開いた。


「由太」


「何?」


「私、本当は小野寺光っていうの」


「うん」


「三枝藩の家老の娘だったの」


「うん」


「藩がなくなって、家族もいなくなって……静に助けてもらったの」


「うん」


お光は由太を見る。


「驚かないの?」


「ちょっと驚いた」


「それだけ?」


「うん」


「……どうして?」


由太は考えた。


「だってさ」


「うん」


「今のお光さんは、お光さんじゃん」


「……」


「昔、偉い人の娘だったとしても、今は俺の飯を三杯食べるお光さんでしょ」


お光は吹き出した。


「何よ、それ!」


「違う?」


「違わないけど!」


由太は笑った。


「それにさ」


「何?」


「静さんに拾われたんでしょ?」


「……うん」


「じゃあ俺と同じだね」


お光は目を丸くした。


「同じ?」


「うん。俺も静さんに拾われた」


「……」


「俺たち、拾われ仲間だ」


お光はしばらく由太を見つめていた。


そして――。


笑った。


今までで一番、自然な笑顔だった。


「そうね」


「でしょ?」


「でも、私の方が先輩ね」


「え?」


「七年前から静に世話になってるもの」


「じゃあ先輩、皿洗いお願い」


「それは後輩の仕事!」


由太は笑った。


お光も笑った。


奥の部屋で、静が二人の声を聞いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。