シーン3 薩摩藩邸
(登場人物)
青井由太
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。
神無月静
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。
坂本龍馬
土佐藩士。京で活動する尊王攘夷派、後に海援隊を立ち上げる。
お龍
坂本龍馬と恋仲。
由太はなぜかそのまま居座っていた。
龍馬:
「坂本龍馬じゃ」
由太:
「青井由太です」
龍馬:
「知っちゅう」
由太:
「え?」
龍馬:
「桂さんから聞いたことがある」
由太:
「また桂さんか……」
龍馬:
「京に妙な若い男がおるとな」
由太:
「どういう風に?」
龍馬:
「女に養われながら、あちこちので変に首を突っ込む男」
由太:
「俺、首突っ込んでないですよ」
龍馬:
「本人だけがそう思うちゅう話じゃ」
由太:
「失礼だなあ」
お龍:
「でも、坂本さん」
龍馬:
「ん?」
お龍:
「本当にこれからどうするんです?」
龍馬の表情が少し真面目になる。
龍馬:
「しばらく身を隠すしかないのう」
お龍:
「その傷で?」
龍馬:
「治るまで大人しくしちょる」
由太:
「それなら温泉行けばいいじゃん」
二人:
「え?」
由太:
「温泉」
龍馬:
「なぜ温泉じゃ」
由太:
「怪我した時は湯治するんでしょ?」
お龍:
「まあ……」
由太:
「京にいたら、また捕まるかもしれないし」
龍馬:
「……」
由太:
「だったら遠くへ行って、温泉入って、傷治してくればいいじゃん」
お龍:
「簡単に言いますね」
由太:
「簡単な方がいいでしょ」
龍馬は腕を組む。
龍馬:
「なるほど」
由太:
「それに」
お龍:
「?」
由太:
「二人で行けば楽しいよ」
お龍:
「二人で?」
由太:
「せっかくなんだから」
龍馬がお龍を見る。
お龍も龍馬を見る。
由太:
「夫婦なんでしょ?」
お龍:
「……まあ」
由太:
「じゃあ二人で旅行すればいいじゃん」
龍馬:
「旅行?」
由太:
「うん」
龍馬:
「夫婦で?」
由太:
「そう」
龍馬はしばらく考える。
そして――。
龍馬:
「それは面白い!」
由太:
「でしょ?」
お龍:
「坂本さん、遊びに行くんじゃないんですよ」
龍馬:
「療養じゃ、療養!」
由太:
「そうそう。療養って言えば静さんも――」
途中で止まる。
龍馬:
「静さん?」
由太:
「俺の飼い主」
龍馬:
「おんしも温泉に行きたいのか」
由太:
「ものすごく」
龍馬:
「なるほど!」
由太:
「俺も静さんと二人で温泉に行きたくて、ずっと説得してるんですよ」
お龍:
「それで私たちに勧めたんですか?」
由太:
「うん」
お龍:
「……」
龍馬:
「はっはっはっ!」
お龍:
「坂本さん!」
龍馬:
「痛っ!」




