シーン6 置屋・明治
【登場人物】
青井由太
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。
お光
静と同年代の芸妓。明るく世話好きで、花街の情報通。静とは気心の知れた友人。
明治。
京都。
刀を差した侍の姿は減り、町には洋服を着た者も現れ始めた。
新しい学校。
新しい役所。
新しい制度。
何もかもが変わっていく。
だが。
トントントントン。
朝。
由太が大根を切っている。
静:
「由太」
由太:
「何?」
静:
「うるさい」
由太:
「大根に言って」
静:
「お前が切っているのだろう」
由太:
「じゃあ一本のまま出す?」
静:
「切れ」
由太:
「はいはい」
そこへお光が入ってくる。
お光:
「おはよー!」
由太:
「朝飯食べる?」
お光:
「食べる!」
静:
「即答するな」
何年経っても変わらない。
お光:
「そういえば由太」
由太:
「何?」
お光:
「あんた結局、働いてないの?」
由太:
「失礼な」
お光:
「働いてるの?」
由太:
「毎日、静さんの世話してる」
お光:
「それは仕事?」
由太:
「俺にとっては」
静:
「その割に小遣いを要求するがな」
由太:
「労働の対価です」
静:
「お前は自分をヒモと言いたいのか、労働者と言いたいのか、どちらなんだ」
由太は少し考える。
由太:
「ヒモ」
お光:
「そこは変わらないんだ」
由太:
「大事なところだから」
三人が笑う。




