シーン3 置屋・翌日
【登場人物】
青井由太
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。
お光
静と同年代の芸妓。明るく世話好きで、花街の情報通。静とは気心の知れた友人。
翌日。
お光が大笑いしていた。
お光:
「あはははは!」
由太:
「笑い事じゃないよ!」
お光:
「だって!」
由太:
「俺、捨てられるかもしれない!」
お光:
「捨てるなんて言ってないでしょ」
由太:
「『身の振り方を考えろ』って、ほとんど捨てるって意味じゃん!」
お光:
「じゃあ働けば?」
由太:
「嫌だ」
お光:
「即答するな」
由太:
「俺、何のために静さんに拾われたと思ってるの」
お光:
「家事をするためでしょ」
由太:
「養われるため!」
お光:
「最初はね」
由太:
「最後まで!」
お光は由太を見る。
お光:
「……由太」
由太:
「何?」
お光:
「あんた、料理できるじゃない」
由太:
「できる」
お光:
「店を出せば?」
由太:
「嫌だ」
お光:
「洗濯も上手い」
由太:
「うん」
お光:
「商売にすれば?」
由太:
「嫌」
お光:
「人当たりもいい」
由太:
「そうかな」
お光:
「商人にも向いてる」
由太:
「嫌だ」
お光:
「何ならやるのよ!」
由太:
「静さんの世話」
お光:
「……」
由太:
「それなら毎日できる」
お光は笑うのをやめた。
由太:
「朝飯作って」
指を一本立てる。
由太:
「洗濯して」
二本。
由太:
「掃除して」
三本。
由太:
「静さんが帰ってきたら飯出して」
四本。
由太:
「疲れてたら愚痴聞いて」
五本。
由太:
「怪我してたら薬塗って」
お光:
「……」
由太:
「それなら嫌じゃない」
お光:
「由太」
由太:
「何?」
お光:
「あんた、それ……」
少し笑う。
お光:
「もうただのヒモじゃないんじゃない?」
由太:
「?」




