シーン2 置屋・夜
【登場人物】
青井由太
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。
その夜。
静が帰ってくる。
以前より帰宅時間は早くなった。
由太:
「お帰り」
静:
「ただいま」
由太:
「今日は早かったね」
静:
「ああ」
由太:
「仕事?」
静:
「最後のな」
由太の手が止まる。
由太:
「最後?」
静は刀を置いた。
静:
「間者を辞める」
由太:
「……本当に?」
静:
「ああ」
由太:
「もう夜中に出ていかない?」
静:
「たぶんな」
由太:
「人に捕まらない?」
静:
「その予定だ」
由太:
「斬られない?」
静:
「努力する」
由太:
「……そっか」
静:
「何だ」
由太:
「よかった」
静は由太を見る。
あまりにも普通に言うので、かえって返す言葉がなかった。
静:
「ただし」
由太:
「?」
静:
「これまでのような金は入らなくなる」
由太:
「……え」
静:
「お前を養う余裕もなくなるかもしれん」
由太:
「ええっ!?」
静:
「そこが一番大きな反応なのか」
由太:
「だって大問題だよ!」
静:
「だから――」
静は少し言いにくそうにする。
静:
「お前も、そろそろ自分の身の振り方を考えろ」
由太:
「身の振り方?」
静:
「もう十九の小僧ではない」
由太:
「拾われた時から十九だけど」
静:
「そういう話ではない」
静は由太から視線を外した。
静:
「私に飼われ続ける必要はない、ということだ」




