シーン4 豆腐屋 夜
(登場人物)
青井由太(19)
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静(26)
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。剣の腕も立つ。
吉田稔麿(23)
長州藩士。京で活動する尊王攘夷派の中心人物の一人。池田屋事件で死亡したとされているが、、、
佐々木源吾
新選組の隊員。
お春
吉田を豆腐屋の物置に隠した直後。
表から声。
新選組隊士:
「開けろ!」
お春:
「ひっ!」
由太:
「普通にして」
お春:
「無理!」
由太:
「笑って」
お春:
「もっと無理!」
戸が開く。
そこにいたのは佐々木源吾だった。
源吾:
「由太?」
由太:
「あ、佐々木さん」
源吾:
「何をしている」
由太:
「豆腐買いに」
源吾:
「この時間に?」
由太:
「静さんが湯豆腐食べたいって」
源吾:
「暑いぞ」
由太:
「静さん、気分屋だから」
源吾:
「……」
由太:
「何?」
源吾:
「この辺りに血まみれの浪士が逃げてきた」
由太:
「怖」
源吾:
「見なかったか」
由太:
「見てない」
源吾が由太を見る。
由太も見る。
源吾:
「本当に?」
由太:
「うん」
源吾:
「……」
その時。
物置から小さな音。
コトッ。
源吾:
「何だ」
由太:
「あ」
源吾:
「?」
由太:
「猫」
源吾:
「猫?」
由太:
「この店、猫いるんだよ」
お春:
「い、いる!」
源吾:
「妙に必死だな」
由太:
「夜だから猫も元気なんだよ」
源吾:
「……」
物置を見る。
由太:
「佐々木さん」
源吾:
「何だ」
由太:
「団子食べる?」
源吾:
「今は仕事中だ」
由太:
「一個余ってる」
源吾:
「……何味だ」
由太:
「みたらし」
源吾:
「一つだけだぞ」
由太:
「はい」
源吾は団子を受け取る。
源吾:
「他を探す。怪しい奴を見たら知らせろ」
由太:
「分かった」
源吾たちは去る。
沈黙。
由太:
「……行ったよ」
物置が開く。
吉田:
「君は……」
由太:
「何?」
吉田:
「新選組と知り合いなのか」
由太:
「団子仲間」
吉田:
「何者なんだ君は」
由太:
「ヒモです」
吉田:
「……聞かなかったことにする」




