シーン5 置屋 炊事場と静の部屋 夜
【登場人物】
青井 由太/19歳
江戸の裏長屋育ち。働くことは苦手だが、炊事・洗濯・掃除など生活能力は高い。
「女性に養ってもらう代わりに、その女性の生活を支える」という独自のヒモ哲学を持つ。
本人に歴史を変える意図はまったくないのに、何気ない親切や行動が幕末の重大事件を微妙に動かしてしまう。
神無月 静/26歳
白拍子・芸妓として活動する一方、裏では倒幕派に関係する女間者。剣術にも優れる。
由太を拾って「衣食住を与える代わりに家事を任せる」という関係になる。
由太より7歳年上で、基本的には姉・保護者・雇い主のような立場だが、次第に由太を対等な相棒として見るようになる。
隊士A,B
<炊事場>
(炊事場。古びた竈。米袋、味噌樽)
由太:
「おお、ちゃんとした米あるじゃん。
これだけの材料ありながら、あの惨状の食器……もったいない」
(手際よく米を研ぐ由太)
由太:
働くのは嫌いだ。汗をかくのも嫌いだ。
でも――
“うまい飯を作る”のは、嫌いじゃない。
(味噌汁の準備。昆布を取り出す)
由太:
「京の味噌か……江戸とは違う香りだな。
静さん、何の味が好きだろ」
(ふっと笑う)
由太:
「……飼い主の好みくらい、ちゃんと覚えないとね」
<静の部屋>
(静、刀の手入れをしている。窓の外から新選組らしき隊士の声)
隊士A(外):
「おーい、ここに白拍子の静って女がいるか」
隊士B(外):
「あの女、近頃どこへ出入りしてるか、確かめろってさ。副長が」
(静、一瞬で刀を鞘に収め、表情を消す)
静:
「……また厄介な虫が寄ってきたな」
(襖を開けて廊下へ)




