シーン4 置屋・玄関〜静の部屋 夜
【登場人物】
青井 由太/19歳
江戸の裏長屋育ち。働くことは苦手だが、炊事・洗濯・掃除など生活能力は高い。
「女性に養ってもらう代わりに、その女性の生活を支える」という独自のヒモ哲学を持つ。
本人に歴史を変える意図はまったくないのに、何気ない親切や行動が幕末の重大事件を微妙に動かしてしまう。
神無月 静/26歳
白拍子・芸妓として活動する一方、裏では倒幕派に関係する女間者。剣術にも優れる。
由太を拾って「衣食住を与える代わりに家事を任せる」という関係になる。
由太より7歳年上で、基本的には姉・保護者・雇い主のような立場だが、次第に由太を対等な相棒として見るようになる。
女将
(女将の顔は出さず、声だけ)
女将(声):
「静ちゃん、遅かったねぇ。その子は?」
静:
「拾い物です。少しの間、部屋子として預かります」
女将(声):
「静ちゃんが言うならいいけどねぇ。
変なことしたら、叩き出すよ、坊や」
由太:
「変なことって何ですか、具体的には」
女将(声):
「自分でわかってるんだろ」
(由太、ビクッ)
由太:
「……気を付けます」
カット。
(静の部屋。広くはないが、質素で散らかっている。洗ってない茶碗、脱ぎっぱなしの衣服)
由太:
「……戦場、発見」
静:
「何だ、その顔は」
由太:
「いや、想像以上に……こう……“女の部屋”じゃない」
静:
「私は家事が嫌いだ。それだけだ」
由太:
「嫌い以前に、半分“戦後”みたいな惨状だけどね……」
(由太、袖をまくり上げる)
由太:
「じゃ、まずは炊事場と水場の確認から。
飯、炊いていい?」
静:
「好きにしろ。ただし、音は立てるな」
由太:
「なんで?」
静:
「……ここは壁が薄い。
私の帰りがいつでも分かると、ややこしい客が増える」
由太:
「“お得意様”とか?」
静:
「似たようなものだ」
(静、窓際に腰を下ろし、外をうかがう癖がある様子)
由太:
(ちらっと見て)
(モノローグ)
>この人……ただの芸者じゃない。
>目つきが、どこか“剣呑”なんだよな。
(由太、炊事場へ)




